府職労自治研推進情報誌「コミュナルスクエア」9号より(2)

府立社会福祉施設の「民間委託」と「自立自助支援」の問題点

健康福祉支部・小山智美

府立直営の社会福祉施設つぶしは、1988年府立八尾学園(知的障害児通園施設)の八尾市移管(即民間委託)から始まり、1993年明光学園(知的障害者授産施設)の事業団委託、2000年百舌鳥学園(知的障害児通園施設)の堺市移管、児童養護施設菊水学園の廃止(1999年)、同いずみ学園の廃止(2001年)と続いています。
委託や廃止の理由は、「府と市の役割分担」「公と民の役割分担」「府立としての役割は終わった」というものです。そのことは、1998年12月「府立社会福祉施設等あり方検討会」最終報告にも、公・民、府と市町村の役割分担を明確にするという口実で府立社会福祉施設の民営化、ノーマライゼイション・地域福祉の強調で市町村移管を主張、府立施設はコストがかかるとし、府立社会福祉施設を「専門的、広域的対応が必要な分野に特化」し、民間に丸投げしていくということを露骨に打ち出されています。そして、この方向に沿って今も府立社会福祉施設をなくしていこうとしているのです。
しかし、これまでの府立社会福祉施設の民間委託・廃止問題は、別表に示しているように、決して道理のあるものではありません。府・市町村の役割分担論は結局府は国以上のことはやらないという表明にしか過ぎず、自治体本来の役割を放棄するものです。
大切なのは、福祉施設利用者にとって必要な福祉サービスが、量的・質的に、安定的に、自治体の責任で権利として保障されているかということです。この点で言うと、府下の社会福祉施設はまだまだ充分足りているといった状況にはないというのが現実です。本来府民の立場にたち拡充していれば、ますます役割は大きくなってきたであろう府立社会福祉施設を逆に縮小する方向へと持っていき、そのことをもってニードや役割がないなどというのは本末転倒としか言いようがありません。

1999年8月大阪府社会福祉審議会は「大阪府の福祉施策をこれからの時代に相応しいものへと再構築していくための、基本的な考え方とその推進方策について(「自立支援型福祉社会をめざして」)」という答申を決定しました。そしてこの答申に沿って府は現在の福祉施策を再構築していくとしています。 答申の特徴は、第一には、国、厚生省が進める社会福祉基礎構造改革を推進、先取りし府の福祉施策の具体化をはかるものであるという点です。
(基礎構造改革とは介護保険を皮切りに①措置制度から利用契約制度への変更、②サービス利用者の応能負担から応益負担への転換、③サービスの供給主体に営利企業の参入を図るというもので、社会福祉事業法等の改正により2003年度から障害者施策についても利用契約制度に移行していく(支援費支給制度)ことになっています。)
第二には、大阪府福祉予算において、個人給付の偏り、介護・医療費の負担の急増が財政硬直化を招いているなどと指摘しているということです。
第三には、「自立支援型福祉社会」をめざすとしながら、自立には自己決定が大切でありそのための多様な選択肢として営利企業の参入・自由契約化が必要であり、「大切なことは他人を思いやり、互いに支え合い助け合おうとする心」であると、「福祉施策にかかる負担(コスト)の分かち合いへの府民合意に努めなければならないと導き出していることです。
第四に福祉における「コスト」論が展開され、財源不足を理由に民間営利企業に福祉分野進出の道を開き府自身の公的責任範囲の縮小を表明する内容になっているという点です。
府は国の流れを先取りし、府の役割を広域調整機能等にとどめようとしています。支援費支給制度への移行すると、措置制度のもとでは相談・サービスの保障・基盤整備計画が行政の責任であったものが、相談機関は相談、利用先は利用者本人が決定、自治体は支援費を支給するのみと、行政が責任を持って関与することがなくなることになります。利用契約を補完するものとして権利擁護システム(権利擁護事業・苦情処理制度)が創設されますが、これが真に実効あるものにならなければなりません。

(別表)

施設名 委託の内容 委託などの理由 問題点・あるべき姿
八尾学園 八尾市移管、即日民間法人委託
1988年4月1日
①行政改革大綱(岸版)
②定員開差が進んでいる
③広域性の減少
④近隣市町村の通所施設充実
①「府立総合療育センター構想」(提言) ②在宅を余儀なくされている障害児の存在
②在宅を余儀なくされている障害児の存在
③八尾、柏原両市から通園
④障害児療育で府が先駆的に果たすべき役割あり
明光学園 現府障害者事業団に委託。
1993年4月1日 明光ワークス
(知的障害者授産施設)
箕面育成園(知的障害者更生施設)
箕面育成園附属診療所
INA職業センター
箕面通勤寮
スポーツセンター
①行政改革大綱(中川版)
②施設福祉と地域福祉の一体化。
運営主体の一体化
③民間の迅速性と柔軟性の優位。
公の安定性との結合
④通所機能は市の役割
⑤全部府立直営でやると金がかかる(福祉部長発言)
①「明光総合福祉センター構想」(提言)
②就労促進などの実績、定員もほぼ満杯
③運営主体は府障害者事業団、育成園、後に授産事業振興センターは府社協に委託され、「運営主体の一元化」は破綻。
百舌鳥学園 堺市移管
2000年4月1日
①行政改革大綱(横山版)
②「府と市の役割分担」論。
通所・通園施設は市の役割。
③入所制限により児童を減らす
43年間に8名の職員削減強行
①提言「百舌鳥学園の今後の方向について」
②ニードがあるにもかかわらず、ニードはないとして、児童の受け入れ枠を減らし縮小。他市の子どもが入所しにくい状況も生まれた
③障害乳幼児への府の先駆的役割(医療、研究など)、広域的役割
児童養護施設 菊水学園1999年4月1日
いずみ学園2001年4月1日
廃止。統配合して、新たに「子どもライフサポートセンター」を設置。
①行政改革大綱(横山版)
②児童数の減少
③児童問題の複雑多様化に対応
④民間で困難な府立だからできる領域を担う
⑤児童の自立支援施設の新設
①養護件数は増加の一途
②大阪府下の民間養護施設満杯状況
③引き続き家庭代替型、支援型の児童養護施設は必要であり虐待など複雑な事情を抱えている子どもも増えている。
④児童の自立支援施設を付加することが望ましい。
⑤いずみ学園の廃止と同時にライフサポートセンター開設との計画が遅れたにもかかわらず、いずみ学園を先に廃止。