大阪府政の変質・解体ねらう「新行財政計画(素案)」 ーその問題点を明らかにするー <検証編>

大阪府は、2001年8月3日に「新行財政計画(素案)」を発表しました。
「素案」策定の趣旨は、府財政が依然として深刻な財政危機にあり、2000年度の443億円の赤字から、2006年には677億円の赤字となり、「財政準用団体」に転落する、その翌年には1267億円のも累積赤字になるという長期財政推計を2月に示した上で、それを回避する新たな方策であるとしています。
「素案」は、8月の1ヶ月間でパブリックコメントで府民の意見を聴取し、9月府議会の審議を経て「案」とした上で、2002年度からの施策・予算編成に反映するとしています。
また、「新計画案」は、来年からの向こう10年間の大阪府行財政運営の「基本指針」となるもので、府行政内部においては、今後の施策と予算、執行体制など多くの点で「新計画案」を下敷きに協議・検討されるというかなりの拘束力をもつものとなります。
「素案」は、冒頭で「スリムな組織でコストをダウン」、「府民参加・府民本位のサービス」で「安全・安心」の府政を実現、「21世紀、大阪府は3つのSに挑戦する」としています。
しかし、その内容は、行財政計画には痛みが伴うもの、今痛みを避けて、改革を先送りすることはできないと、大阪府・自治体行政の役割を徹底して絞り込み、「民活の推進」「府民・NPOとの協働」「市町村との役割分担」で府の事業を投げ捨て、全ての施策・事業にわたる「再構築」の目標と計画をあげています。 そして、それらの「行革の取り組み」を実行することで、大阪府の財政再建団体転落を回避し、10年後には単年度黒字を達成する「10年後の財政収支見通し」を推計しています。
この「計画」は、大阪府の財政危機悪化をもたらした根本的な原因については触れておらず、関西新空港建設を中心とした開発優先で進めてきた「負の遺産」とその責任については、語ろうとしていません。 そういった中味をもつ「計画」が進められれば、府民にさらなる痛みをもたらします。 到底まともな「財政再建計画」といえるものではありません。
その上、「大阪都市圏における地方自治制度の将来像」で、都道府県制度のあり方や広域自治体の機能強化についても言及し、大阪府の存在自身をも問い直すことを表明しており、まさに「大阪府解体計画」と言うべきものです。
府職労は、「財政再建プログラム案」をはじめ、これまでの大阪府の「財政再建・行財政改革」とは何だったのか、財政再建が果たせたのか、その結果府民にどんな影響をもたらしたのか等を明らかにするとともに、「新行財政計画(素案)」について府民と職員の立場からおもだった問題を探ってみました。
また、今後、財政再建、府民本位の府行財政に向けての提言と、地方自治体としての大阪府のあり方等について、討論を深め、「続編・パンフレット」を作成していく予定にしています。
21世紀を府民の将来の不安を取り除き、府民本位の大阪府政に変えていくために、職場や関係団体の皆さんに活用いただき、職場や府民団体等と懇談・討論をすすめながら、府民本位の行財政再建と府民要求実現を求める運動にともに奮闘したいと考えます。
最後に、パンフレット作成にあたって、大阪自治体問題研究所の重森 曉先生(大阪経済大学経済学部教授)、森 裕之先生(大阪教育大学教養学科助教授)にご協力いただいたことにお礼を申し上げます。

2001年8月 大阪府職員労働組合

第1章 府行革・「財政再建プログラム」で、財政再建はできたのか

(1)財政再建プログラムとは何だったのか?

大阪府は、深刻な財政危機に陥るなか、1996年に「大阪府行革大綱」を作成して以来、福祉・教育・医療を中心とする経費の削減、人件費の抑制、手数料など住民負担の増加といった財政危機の原因を覆い隠した「財政再建方策」を打ち出してきました。そして、その結果は私たちの指摘通り、財政再建には至りませんでした。
「財政再建」を一層本格的にすすめるため1998年9月に発表された「財政再建プログラム案」は、99年度の財源不足は4950億円で、これが将来ピーク時の2002年度には6250億円に達すると予測していました。そして、財政危機を早急に克服するため、1999年度からの3カ年を「緊急対策期間」と位置づけ「財政再建10カ年計画」としました。
「財プロ」を含む「府行革大綱」以来の「財政再建方策」は、財政赤字の原因を人件費・公債費・扶助費などいわゆる義務的経費の増大にあるとして、人件費の削減、国庫補助事業の10%削減、府単独事業の30%削減が掲げられ、その結果は[表1-1][表1-2]にあるような削減を行ってきました。
「財プロ」では、「府財政再建計画」と同時に「明日の大阪づくりに向けての”府再生計画”」が位置づけられました。その中心は、大阪のインフラ整備を基本にした従来路線の継承でした。府政転換の基本的方向として「府政に求められる役割を精査」「直接的なサービス提供から府民・企業が活動しやすい条件の整備」「府民の満足度を尺度に」が唱えられ、「行政と民間との適切な役割分担」の名のもとに直接サービスからの撤退と費用対効果の精査によるコスト削減の路線が引かれることになりました。府の施策・事業を見直すモノサシは、経費削減が至上命令で、行政が担うことの意義や責任が後景に追いやられる路線が引かれることになりました。

(2)財政危機は打開できたか

この5年間の行財政運営の特徴は、第一に、人件費や福祉・教育・医療等府民施策関連予算が大幅に削減される一方、国際会議場建設や関空2期事業などの投資的経費には年間約4600億円以上の投入を行い、大阪府の一層の財政悪化を人為的に作り出してきました。
一方、「財政健全化に向けた取り組み」[表1-2]で人件費抑制分は、人員削減や昇給停止等により、96年度から01年度までの6年間で約1463億円 (年間約244億円)となっています。また、財政再建プログラム(案)の29項目の個別見直し[資料2]の内、公立病院設置市町村助成や私学助成(府単独分)、老人・重度障害者(児)・母子家庭・乳幼児入院の医療医療費公費負担など17項目の福祉・教育・医療等府民施策関連予算は、99年度から01年度の3年間で約687億円(年間約230億円)が削減されています。
しかし、「財政再建」5カ年の府財政の推移[表2]にみるように投資的経費で96年度から01年度のなかで最も少ない2000年度の4600億円は、最高時の95年度7328億円と比べると、減少してはいますが、(95年当時の法人二税は3798億円)、府税の法人二税の収入(2000年度3933億円)と同水準である85年実績の2600億円と比べ2000億円程度上回っています。
「財政再建」の間にも、大規模開発優先の府政運営をすすめてきたかは明白であり、財政再建が進んでいない最大の要因もこの点にあります。
また、これまでの放漫財政のつけである借金返済のための公債費の増加が際立っています。
義務的経費に占める人件費のウエイトが96年度の79.3%から01年度の70.0%と9.3ポイント減少しているのに比べ、公債費は15.5%から24.4%と8.9ポイント増加しており、公債費が経常収支比率を引き上げる役割を果たしています。
第二の問題は、泉佐野コスモポリスの破綻処理に270億円、コクサイホテルの破綻処理に51億円、土地開発公社用地再取得費に500億円など 第三セクター・外郭団体の救済のための一般会計からの財政支援が増加していることです。
企業局、土地開発公社、住宅供給公社をはじめ、多くの外郭団体や第三セクターの経営状況から考えて、今後ますます増えることが予想され、一般会計への悪影響が考えられます。
第三の問題は[表3]にあるように、財源対策として、減収補てん債、退職手当債、財政健全化債など府債の発行に依存する傾向が強くなっていることです。
96年度は約200億円であったものが97年度から2000年度までの4年間では約4900億円(年度平均1200億円)となっています。このことは、府債の発行が国言いなりの「行革」「財政健全化」推進が前提となっていることから、自主的な財政再建にとっての大きな足かせとなっています。  また、過大な府債の発行は、結局借金を後年度に持ち越すだけであり、公債費の増加とあいまって真の財政再建にはなりえないということでもあります。
これらの点からしても、まさに「財政再建計画」の名に値しないものであったことを自ら証明するものとなっています。

(3)「財プロ」で行われたのは、府民サービス削減と人件費削減

「財プロ」による取り組みの結果、99年度からの3年間で人件費の見直しで1143億円、事業の見直しで1958億円で、歳出削減合計額は3101億円となっています。
府民サービスが中心の一般施策費は、削減額の38.8%を占めており、又一般施策費と同じく人件費も行政部門・教育部門合わせて3,837人の人員削減と、昇給停止・一時金カット等によって3年間の削減額は、36.9%を占めています。
一方で、公共事業である建設事業費は、削減額の24.3%です。建設関連費のほとんどは、市町村への補助金や民間福祉施設の整備、老人保健施設整備によるものであり、大規模プロジェクトによる公共事業の削減は、わずかなものとなっています。

●「個別施策見直し」で老人医療費公費負担を筆頭に医療と教育分野を大幅削減

資料2]の財プロ上の「見直し項目」の中の一般施策経費は、3年間で1203億円も削減、毎年度30%のシーリングで、270億円、個別見直しで933億円となっています。
個別見直しの削減割合を見ると、73億円削減の老人医療費の一部負担金補助制度の見直しをはじめ重度障害者(児)・母子家庭医療費公費負担事業の見直しは197億円と大幅な削減となりました。
教育関連では、私学助成(38.9億円)や府育英会助成(96.2億円)などが大きな削減です[表4]。

●職員定数削減は、福祉・保健と病院職場が突出

大阪府の職員定数(学校職員・教員・警察職員を除く)増減を3年間の推移で見てみると、全体でも毎年削減されてきました。削減された職員定数を「福祉・保健」「病院」「商工労働」「土木建築」「農林水産」「その他」の項目で区分してみると、「福祉・保健」では99年度に介護保険制度創設関連の増もありましたが、保健所再編や菊水学園、もず学園、いずみ学園の廃止による減、「病院職場」の現業職員中心とする減、2001年度の「健康科学センター」新設による財団委託による大幅減など、いずれも医療・保健・福祉職場の縮小・府行政の守備範囲からの撤退が突出しています。
職員定数削減が、毎年どのように全体職場の削減から影響を与えたかをみると、99年度は「土木建築」、2000年度は「福祉保健」、2001年度は「病院」が大きく影響しているのが[表5]からもわかります。「土木建築」が26.9%となるのは、市町村への業務移管と合わせ、一般会計予算の事業費減(業務減)による人員減です。
そして3年間の平均では、「病院」32.5%、「土木建築」26.9%、「福祉保健」14.4%の順で影響を与えています。
財プロ実施の3年間にみる「人員削減」は、「病院」「福祉・保健」合わせて47.9%です。これらの職場は、職員=事業=府民サービスであり、人件費削減が府民サービス削減につながったかの証明ではないでしょうか。[表5

●「行政評価」の結果は、コスト削減と府民負担増

大阪府は、府政の質と効率性の追及、府政の透明性の向上、職員の意識改革を図っていくため、1999年度から行政評価システム(事務事業評価、建設事業再評価、主要プロジェクト評価、公営企業の経営評価」を導入しました。
「行政評価」を実施した結果[表6]のように「休止・廃止」「見直し」「拡大」「継続」と4分類し、2000年度当初予算には190.5億円、2001年度予算には195億円の削減効果を生み出しました。
全部局の「休止・廃止」と「見直し」のなかの健康福祉部は、712事業のうち297事業で41.7%です。(「事務事業評価結果」で「休止・廃止」「見直し」された具体例:[資料3])
「行政評価」の目的は、「府政の質と効率性の追及」は、施策の目的を明確にして、成果をできるだけ客観的にわかりやすく評価することにより府民にとって必要な施策を選択すると同時に、より効果的で効率的な実施に努めるとしていますが、問題は、「行政評価の視点」(評価のモノサシ)としている(1)公共性の精査=市場経済的視点でもって本当に「府政にしかできないこと」かどうかを厳しく精査する (2)利用者主権の尊重=府民の満足度を高めるが、適正な受益者負担を徹底する (3)効率性の追及=費用対効果の精査を徹底すると言う中身です。要は、行政の役割と責任は棚上げで、コスト削減、府民負担増に大きくシフトしていきます。
削減された中には、特別養護老人ホームや知的障害者授産施設などの社会福祉施設管理費を「民営化」を進めるという理由で大幅削減、「かけこみ緊急資金貸付事業費」を審査要件を厳格に見直し削減、受け皿となる体制も脆弱な市町村との役割分担を理由に「アトピー性皮膚炎対策事業」や「思春期保健電話相談事業」などを削減廃止するなど府民に受益者負担増の結果となりました。

●ビジネスインフラ整備への投資集中、削減された社会保障分野

財政再建プログラムは、財政状況が厳しいなかで関空2期事業や国際会議場建設等に現れたように国際的な都市間競争に競り勝つために、空港、港湾、高速道路、拠点的な施設に財政のかなりな部分を投入することによって地域経済の活性化を図るという、ビジネスインフラの整備に、投資を集中させるには、どこかを削減しなければならず、そこで「財プロ」で描かれたのが、「公民の役割分担」でした。
要するに行政がやっていたサービスを全面的に見直して、身近なサービスは市町村に、民間でできるところは民間でと、社会保障部分を対象に府の財政支出を削減したというのが、「財プロ」であったということです。

(4)借金漬けの大規模プロジェクト
●「財政再建」中に借金増額

経常収支比率の悪化がすすみ、普通建設費に回すべき自主財源が減少しています。しかし普通建設事業費は増えており、単独事業費は1999年度をみれば、財源の97%が借金=単独事業債に依存するという異常な財政運営になってます[表7
バブル崩壊後の長引く不況・倒産などによる府税収入の落ち込みは、財政健全化方策が始まった1997年度からの3年間に4700億円下回り、国庫支出金が1044億円減る中で、投資的経費は1651億円減額にとどまっています。[表8
しかし、99年度末の一般公共事業債と一般単独事業債の現在高を、その3年間に2879億円、年間約960億円という巨額の借金運営を続けてきたのです。「財政再建」を進める中で、借金の府債残高を4298億円も積み増して、99年度末には府債残高は3兆7600億円に増やしています。[表9][表10

●「都市再生」事業を先取り

関西財界の要望に応える府政運営は、国借金で公共事業を推進する政策に追随する行政判断に甘さがあり、自治体労組や民主団体などの関西空港2期事業の中止、ゼネコン向けの大規模開発の中止・休止要求を全く無視した結果、今日の財政の深刻な事態を招きました。
空港2期事業の関連事業、本州四国の4本目の紀淡幹線道路計画の推進、阪神高速第2環状線高速道路、空港島港湾や広大な埋め立て港湾整備、道路需要の見込みのない新御堂筋有料トンネル、国際文化公園関連、大規模プロジェクトなどに重点投資し、「都市再生」事業を財政危機のなかで先取りししています。財政運営は借金拡大路線を変更していないのです。

●政府と財界の期待に応えた府政運営

2001年度予算は、[表2]でみたように、投資的経費は「財プロ案」の4700億円から4099億円と600億円減らしています。一方で、府税収入を200億円増やし、府債は1144億円を上回っています。
こうして都市再生のベイエリア・関空2期・高速道路とその関連に一層重点化しつつ、さらに借金の増額を続け2001度には約4兆2876億円というに府債残高となりました。危機的な財政状況は、政府の景気対策への追随と関西財界の期待に応えて公共投資を借金で増やしてきた結果です。[表11

(注)「都市再生事業とは」
小渕内閣の時に経済戦略会議の提言を受けて実施されているもの。小渕・森内閣時の都市再生懇談会、森・小渕内閣での緊急経済対策でも重要なポイントとなっている。PFIなどの手法による都市部での公共事業実施は、民間投資を誘発し、危機的状況にある日本の経済を立て直すために不可欠とされている。
三大都市圏が事業の対象で、京阪神地域の都市再生懇談会は、太田知事を始め、京都、兵庫両県知事や関経連会長等で構成されている。

大規模プロジェクトと企業局が果たした役割
●宅地開発と臨海開発で全国を先駆ける

大阪府が千里ニュータウンの開発構想をもったのは1957年のことでした。高度経済成長が始まり、都市への急激な人口流入は深刻な住宅問題を引き起こしました。乱開発により市街地が無秩序にスプロール化される状況のもとで、良好な住環境にある安価な宅地を大量に供給することを目的に千里ニュータウンが、次いで泉北ニュータウンが計画されました。
千里ニュータウンは(1)10年の事業期間、200億円にのぼる事業費(当初計画)、そのうえ理論的にも実践的にも経験のない事業であり、(2)単に住宅を建設するだけでなく道路、河川改修など広範な技術を必要とすることから建築部の行政部門では担えないとし、当時、土木部で着手していた堺・泉北臨海工業地帯造成事業とも併せ、1960年7月、これらの事業を施行する企業局が発足しました。
堺・泉北臨海工業地帯は大阪府の産業の高度化とその活性化を目的としましたが、同時期に埋立による臨海工業地帯は全国各地に立地し、深刻な公害問題を引き起こしました。とくに瀬戸内海沿岸では公害問題が顕著に現れ、これを契機とした住民運動は1973年10月に瀬戸内海環境保全特別措置法を生み出しました。この法律制定後の企業局施行による二色の浜環境整備事業では、全国初の環境アセスメントを実施し、内陸部に散財する中・小工場の移転を図るための工場用地が確保されました。
一方、千里・泉北ニュータウンは、府営住宅などの公的賃貸住宅を全体戸数の約80%とし、大量の住宅供給をめざしたものの、住宅問題の根本的な解決には至りませんでした。しかし、その開発手法は「新住宅市街地開発法」を生みだし、その後の多摩ニュータウンなど、全国の宅地開発のモデルとなりました。
大規模ニュータウン開発や水深10mの埋立など全国の先駆けとなる事業を施行した企業局が、わが国初の民間活力事業第一号としての関西国際空港に関わることになりました。

●関西国際空港と空港関連事業に全てをかける

1984年10月、関西国際空港株式会社法が成立し、国の事業である第一種国際空港に対して地元自治体等も負担することになりました。当初、岸知事は関西新空港についての地元負担を否定していましたが、この年の8月臨時府議会で関西国際空港(株)への出資を審議抜きで強行しました。
ただし、「空港に府民の税金は使わない」として、この年の4月に、負担を明確にするための「関西国際空港関連事業特別会計」が企業局に設けられました。同時に、空港に関連する大幅な機構改革が行われ、企業局に地域整備部が設置されました。
企業局は住宅会計と臨海会計の二つの会計を持ち、原則として一般会計に負担をかけない独立採算性の組織です。そして、企業局の事業は、初期投資を起債で賄い、土地分譲で得られた収入をその償還にあてています。したがって府民の税金は、職員の人件費も含めて使われていません。当時の企業局住宅会計には千里・泉北ニュータウン事業の余剰金として500億円余りの現金預金がありました。この資金が源泉となって、空港会社への出資金・貸付金や空港関連事業である前島(りんくうタウン)事業、阪南丘陵の土砂採取事業に流れていくという構図が、この時でき上がりました。
りんくうタウンは空港機能を支援する基地として計画されていました。ところが、1989年4月に土地利用計画委員会は埋立免許取得時の計画内容と一変する「最終報告」を出しました。そこでは、りんくうタウンが「交流とハイアメニティにあふれる臨空都市」として位置づけられ、ツインのゲートタワービルの構想も打ち出されました。1990年11月、企業局はこの報告書を受けて事業費の見直しを行い、当初の1709億円から5500億円へと大きく膨らむこととなりました。それは、支出面では共同溝の整備など都市基盤の水準を引き上げ、収入面では土地の売却単価を引き上げて分譲収入の増額を図ったためです。
バブル経済絶頂期で、りんくうタウンは現代の「宝島」ともてはやされ、1平方メートルあたり131万円の商業業務ゾーンには、名だたる大企業の進出希望が殺到しました。大阪府が、りんくうタウンの分譲利益1000億円を、関空二期事業の地元負担の一部にあてることを目論んだのはこの頃です。

●借金財政に転落しても続く財政支援

1991年夏頃から景気の先行きが不透明となり、11月にはバブル経済の崩壊は決定的となりました。そうなると、進出を予定していた企業グループは相次いで撤退し、企業局は商業業務ゾーンだけで約4000億円の分譲収入を見込んでいましたが、得られたのは一部の手付金だけでその大半を失う結果となりました。1993年度には関西国際空港関連事業特別会計は企画調整部に移管されましたが、企業局が関西国際空港への出資金372億円を負担することに変わりはありません。しかし、企業局が負担するのはこれのみに止まりません。
りんくうゲートタワービル(株)への出資金51億円や建設負担金150億円をはじめ、出資法人への負担金や貸付金はその源泉となっている住宅会計で支えるのは困難となってきます。そして、1995年度には住宅会計の企業債の未償還額は321億円を超え、関西国際空港関連事業特別会計への住宅会計からの繰入金の累計302億円を上回ることになります。つまり、住宅会計は自らの借金を重ねながら関西国際空港関連事業特別会計の借金を支える状態となったのです。この年の6月、就任間もない横山知事は「開港で伸びた税収分を当てる」との理屈で、関空二期事業の大阪府負担分1174億円に税金を投入することを決定しました。この年度に、企業局は採算性が疑問視されていた水と緑の健康都市の事業も担うことになりました。
大阪府は一期事業の負担分の9割を起債で賄ったため総負担額は730億円となり、そのうち企業局は2000年度末現在、430億円を支出しています。残る300億円とりんくうタウン事業の縁故債4700億円の未償還額3158億円が企業局に大きな債務として残されています。この縁故債の引き受け手には、りんくうタウンの商業業務ゾーンから撤退したグループに名を連ねた銀行がいくつもあります。自ら撤退した事業に資金を貸し付けました。
2000年度に水と緑の健康都市は縮小案が提示され、また、阪南スカイタウンとりんくうタウンの見直しがすすめられていますが、その縮小案と見直し案で事業が完遂したとしても企業局は約2000億円の財源不足が見込まれています。 [表12

(5)落ち込み続く府税収入

2000(平成12)年度の府税の実質収入ベースの税額は、9339億円で、ピークであった1990(平成2)年度の1兆3510億円の約69%(△4171億円)に激変。法人2税(法人事業税、法人府民税)は3933億円で、ピーク時の1989(平成元)年度の約47%(△4418億円)となっており、これは、1980(昭和55)年度(3845億円)とほぼ同水準です。
バブル経済の崩壊により、金融・証券・不動産関係や、大企業の経営不振、不況による製造業など企業経営の悪化、さらには海外への工場移転による産業空洞化等、政府の景気対策の失敗が、直接法人二税と府税収入に影響しています。
特に大阪府は、他の府県に比べ、歳入における府税収入の割合が高く、景気に左右される法人2税のウエイトが高いために、バブル崩壊後の不況の影響を大きく受けています。
表13][表14]にあるように、大阪府の落ち込みが大都市圏比でも大きいことがわかります。これは、大阪が一般的不況というだけでなく構造的不況の結果の税収の落ち込みであることをうかがわせています。

●国と地方の税配分が問題

99年度の決算の数値によると、大阪府の1人当たりの地方税額は、全国平均の1.2倍です。ところが、この地方税に地方交付税を加えた一般財源では、大阪府は、全国平均の3/4にしかなりません。これに対して、高知県、長崎県等は、1人当たりの地方税源は、全国平均の7割程度しかありませんが、逆に1人当たりの一般財源は、全国平均の1.2倍から1.7倍にわたっています。このようなことになるのは、国税として徴収された税源(所得税・法人税・酒税・消費税・たばこ税)の一部が地方交付税として財源の乏しい自治体に配分されるからです。大都市の自治体は、専ら税源の提供者の役割を果たしてきました。95年度の大阪府税収の配分状況をみると、総額9兆2000億円の全税源のうち、67%が国税、市町村税が20%であり、府税が13%にすぎません。この配分割合は、全国平均では国が62%、府県16%、市町村22%となっており、大阪府下の税収配分は、国への割合がより高く、府への配分がより小さくなっています。このように国に吸い上げられた税源が、地方に再配分されることによって、1人当たり一般財源額における逆転現象が生じています。 大阪府の交付額は大きく、99年度では3000億円近くの交付を受けています。全国水準以上の税収がありながら、国に吸い上げられ、地方で国からの巨額の交付額の交付を受けなければなりません。ここに税源配分の矛盾が端的に示されています。こうした構造的矛盾を解消するには、国と地方の歳出準計割合の35:65に近づける税収配分が求められます。

第2章 「新行財政計画(素案)」にみる主な問題点

「素案」は、計画の全体像を示した「総論編」と「具体的取り組み編」の2部構成となっており、2001年度に4970億円の財源不足したもとで、10年間の府行財政運営の抜本改革を実効し、それでも不足する財源を減債基金から借り入れを行うことで、財政再建団体からの転落を回避する「取り組み後の長期財政見通し」と、将来的には減債基金に頼らず、本来の財政健全化に向けてさらなる努力を続けると言う「行革断行」にを示しています。
同時に、「右肩上がりの時代の府政」の施策・組織構造、行政運営システム、職員の意識などこれまでの殻をうち破り、「21世紀型自治体」へ、「財政再建プログラム (案)」の取り組みをより深化させ、府政の構造改革を着実にすすめるとし、(1)全国一スリムな組織づくり(2)「負の遺産」の整理 (3)新しい行政システム「大阪モデル」づくり (4)全ての施策を評価、重点化し、NPOとの協働 (5)財政再建団体に転落させないという「5つの改革」を実行するとしています。

(1)「再建団体回避」を理由に、府政の変質・解体をねらう
●計画の出発から赤字額を膨らました「新行財政計画」!?

2000年度の最終予算では当初予算で計上していた減債基金の活用を行いませんでした。「財政再建プログラム(案)」では、1999年度で、1025億円、2000年度、895億円、2001年度、1105億円と10年間の計画で毎年、減債基金の活用が組み込まれていました。しかし、1999・2000年度では、突如としてこの基金の活用を行わず、2000年度最終予算で443億円の赤字を作り出しています。2月補正予算で「土地開発公社用地再取得費500億円の支出増」と「減債基金からの借り入れ中止に伴う878億円の歳入減」を行ったことが主な要因とされています。
2月に示された「新行財政計画骨子案」の長期財政推計(試算)では、2000年度の赤字443億円が引き継がれます。つまり、高下駄を履いての「新行財政計画(素案)」となっています。なぜ赤字額が443億円なのか、そこに財政運営の判断・考え方、意図が働いたのではないかとも考えられます。
財政状況に対する楽観的見方も間違いですが、「赤字再建団体への転落の危機」を振りかざし「危機感」をあおり、府民や職員に「さらなる我慢」を強要するやり方も間違いではないでしょうか。
「素案」と「財政再建プログラム案」の長期推計を[表15]で比較してみると、歳出面では、人員削減の影響から人件費が1000億円程度減少、2003年度から児童扶養手当業務が市へ移管されることから扶助費が500億円程度減少、単独事業費の減少により投資的経費が650億円~1350億円の減少する一方、98年度以降の減税補てん債の発行や99・2000年度の経済対策のための地方債の発行等による償還費増により、公債費が150億円から200億円の増、介護保険制度の導入や商工制度融資の増、第三セクターへの短期貸付の増などにより、一般施策経費が3450億円から3800億円の増となっています。
また、歳入面では、国庫支出金が250億円から650億円、府債が300億円から650億円、府税が250億円から1900億円減少する一方、貸付金元利収入、使用料・手数料などの特定財源 (その他) が3000億円程度増加しています。

●さらに、負債 (借金) 増やした 「財政収支見通し」

「素案」では、「取り組み後の財政収支の見通し」を示しています[表16]。
第一の問題は、依然として財源対策として減債基金からの借り入れで、その結果、借金である負債残高は、10年後の2011年度には、4兆2800億円から5兆1200億円に、さらに膨らむことです。
第二の問題は、「建設事業の10%削減」とはしているものの、投資的経費 (建設費) として年間3000~4150億円の巨額の財政支出を予定しており、これからも、関空二期事業をはじめとする主要大規模プロジェクトは継続するとしています。
第三の問題は、巨額の投資的経費を生み出すために府民と職員に関わる施策や事業・組織をバッサリ削ろうとしていることです[資料4]。これがすすめられたら、市町村や府民に大きな「痛み」をもたらします。つまり、「素案」は、「財政再建プログラム (案) をより深化させ」、赤字再建団体転落回避を隠れミノに、大型プロジェクトを推進させるため、府民施策を根こそぎ改悪し、自治体の役割と責任を放棄するものです。

(2)開発優先こそ財政破綻の原因

「素案」は、なぜ財政再建団体に転落しかねないほどの財政破綻に陥ったのかについて、「府税収入の大幅な落ち込み」「あれもこれも行ってきた施策構造の遅れ」「人件費や公債費等の義務的経費の増加」をあげていますが、第1章で見てきたように、最大の問題である「大規模開発優先の公共事業」の指摘は全くありません。関西新空港やベイエリア開発など財界・大企業本位の大規模開発を優先し、中小企業育成策を怠ってきた府の行財政運営こそが、大阪経済を疲弊させ、府の財政破綻を招いた最大の原因であることを明確にすべきです。

●関空関連の破綻処理を、税金でまかなう

「素案」は、「企業局事業で見込まれる2079億円の財源不足の解消」と「企業局を収束する」としています。そして、企業局の住宅会計から関西国際空港関連事業特別会計への貸付金は一般財源 (税金) で返済することになっています。大阪府は、関西国際空港への地元負担に「府民の税金は使わない」として、税金を使わずに事業をしている企業局のなかの住宅会計から関西国際空港関連事業特別会計へ繰入れてきました。しかし、二期事業では「府民の税金」投入を決めており、今回の「素案」の通り、一期事業も「府民の税金」を使うことになると、関空の地元負担はすべて府民の税金によることになります。
「府民の税金を使わない」として企業局の住宅会計に依存してきた関空の地元負担とその関連事業が、企業局の財政破綻を招いたわけですが、その原因と責任の所在については、一言の弁明・釈明もなく、その破綻の処理を一般会計の財源、税金で行なうことにしています。

●企業局の財政破綻は、国、大阪府、銀行の責任

企業局の財政破綻の大きな原因は、国、大阪府そして銀行業界にあります。国は第一種国際空港にもかかわらず、自らの責任を放棄しました。次に、大阪府の責任はバブル経済に乗じて二期事業の地元負担分をりんくうタウンの分譲収入から得ようとし、大きく事業の内容を変更したことにあります。また、商業業務ゾーンへ進出を希望し、契約を交わしたにもかかわらず手付金のみの支払で、何のペナルティーもなく撤退を許したことです。巨額の起債を許可した国とともに、それとともに事業計画の変更を承認した日本共産党を除くオール与党の府議会の責任も見逃せません。
また、企業局が借金をしながら関空への地元負担をするという状況になった1995年度には事業の目的や採算性、自然環境問題を指摘されていた水と緑の健康都市の事業を企業局で施行することを決定しました。さらに、1996年には企業局は、りんくうゲートタワービル(株)に150億円の建設工事負担金を支出しています。
銀行の責任については、ツインのゲートタワービルを含む商業業務ゾーンへの変更計画は大和銀行が提案したもので、自らも進出企業として名を連ねていました。そして、事業資金となる縁故債の引受け手としても大きな地位を占めました。縁故債は、ある銀行を幹事銀行として10数行の銀行に大阪府が発行する債券を引受けてもらうもので、りんくうタウン事業では元利約4700億円余りが発行される計画でした。2000年度までには、元金886億円、利息714億円が償還されています。
しかし、バブルが崩壊すると20%の手付金のみ支払い、りんくうタウンから撤退しますが、縁故債の金利で大きな利益を得たのです。
このような事例は大和銀行だけでなく、三和銀行や住友銀行などでも同様です。自ら撤退を決めた事業に、資金を貸すということは一般的にはありえないことです。

●企業局の財源不足を一般会計で補うことの問題

「素案」では、企業局事業を一般会計へ移管したり、公共用地として買い上げるなどが示されていますが、一般会計の導入は公共事業として必要なことを、対象となる施設ごとに精査して決めるべきです。
企業局の財源不足の主な原因は、関空の地元負担と関連事業の不振にあることは先に触れた通りですが、関連事業のなかでも、りんくうタウンは二期事業の地元負担分を捻出するために大きく計画が変更され、その変更計画のなかに二期事業の地元負担分が含まれていると考えるなら、二期事業の地元負担分は1174億円と合わせ、二重に府民への負担となり、さらに、危機に瀕する大阪府財政の大きな負担となっているのです。

●「負の遺産」(住宅開発公社・土地開 発公社) の差損の責任は、大阪府

「素案」には、「負の遺産」の整理のなかに、住宅供給公社と土地開発公社の「経営改善」が触れられています。これらの公社は、大阪府が面的開発推進、関空や水と緑の健康都市事業など大型プロジェクトの牽引役をさせてきたところです。差損を生んだ公社の責任を問うのではなく、大型プロジェクト推進の行財政運営をしてきた大阪府の責任は免れません。
「素案」は、関西国際空港事業において、「わが国の基幹的国際空港としての役割を担っていること」を踏まえ、国の責任において機能強化のための抜本的な方策を講じるべき」としています。これまで私たちは、第一種国際空港である関西新空港は国の責任において建設・運営すること、環境や安全・財政面等から第二種事業は中止すべきことを主張してきました。府当局が「国の責任において」というのであれば、従来企業局会計で貸し付けてきた「関空関連事業特別会計」への長期貸付の返済を一般財源で負担しないこと、大阪府は新たな負担をしないこと、第二期事業が中止する立場を明確にすべきです。

(3)めざすべき10年後の「府政の将来像」は?

改革の目標として、府が10年後にめざすのは、「全ての府民の人権が尊重され、安全に安心して暮らせる活力ある大阪」。「スリムな組織でコストダウン」「府民参加・府民本位のサービス」「安全・安心」の府政、いわば「3つのSに挑戦する府政」としています。

●「これからの自治体行政の役割」を縮小・変質

「素案」が描くこれからの自治体行政について、住民の様々な要望に全て行政が応えうる時代は終わったとし、(1)地域づくりのシンクタンク(地域のビジョンを示し、どのようにそれを実現していけばよいのかを示すこと)、(2)府民や民間が存分に活動できる環境づくり、(3)府民の自立を基本に必要なときに必要な支援を行うという3つの役割としています。
1999年7月の地方分権一括法で地方自治法「改正」は、「住民及び滞在者の安全、健康福祉を保持すること」に始まる規定を削除し、「住民の福祉の増進を図ることを基本とする」との一般規定に変わりました。
そして、府県の機能については、これまで地方自治法の規定されている四つの機能のうち、「統一的な処理を必要とするもの」が削除され、「広域にわたるもの」「市町村に関する調整」「その事務の規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないもの」となりました。
国・自治体の責任・負担は縮減し、自治体は直接サービスからの撤退・管理調整機能に特化、民営化・民間委託の拡大、公的サービスの商品化、社会福祉・社会保障の営利化・産業化を推進していくものに変質してきています。
「素案」がかかげる3つの役割は、地方自治法「改正」を率先・具体化するもので、府県・自治体行政の役割を縮小しています。

●「公と民の協働」のまやかし

第1章でも見てきたように、これまでの府行革・財政再建プログラム(案) 方針にもとづく職員定数削減や事務事業の見直しで、業務の民間委託化、運営委託化が進められてきました。「素案」は、「府が担う分野でも、民間の経営手法や人材・技術力を取り入れて、サービスの質と効率性を向上させる」としていますが、「質と効率性の向上」どころか、すでに委託化による問題が明らかになってきています。
この間大幅に人員が削減され委託化された府立の病院の清掃部門では、年々入札価格が低くなるたび委託業者が変更になり、派遣職員の賃金の低下や、業務内容も粗雑になり、トイレ清掃終了後に婦長が清掃し直すといった事態も生まれています。2000年度に民間委託された公害監視センターの調査研究部門の発生源検体分の分析では委託化による職員の力量の低下で、新しい課題に取り組むだけの弾力性を失うことが懸念されています。技術的中身のない「行政の空洞化」を招く恐れがあります。
「O-157」や「雪印事件」で明らかなように研究部門や監視・検査部門などは、日常的な業務の中での探求の積み重ねが非常・緊急事態に力を発揮するのです。単純業務、行政権限が薄い部門だからといって委託化されたら、「いざ」の時に対応できません。
一部門の業務が全体の業務から切り離され委託化されることで、職場の目的や性格を空洞化される弊害があります。
これ以上、業務の委託や運営委託がすすめば、行き着く先は利用者である府民の「安全」の確保ができず、またもや負担増を招きかねません。

●「住民に身近な公共サービスはできるだけ身近な政府で」は、市町村と府民に負担強要する詭弁

大阪府が行う行政サービスのなかには、府が直接担当せずに市町村が窓口になって、府は財政補助するといったものが少なくありません。老人医療費や重度障害者医療費、母子家庭医療費の助成等は、すでに[資料3]でみたように「市町村との役割分担」で府の負担を削減してきました。
今の大阪府がやっていること、これからやろうとしていることは、地方分権の名のもとに「国でやること」「市町村でやること」を厳密に切り分け、府の補助金の廃止や削減をしてきています。その対象は、福祉や教育、市町村振興補助金 (公立病院設置市町村助成金) や土木市町村補助金など交通安全施設、公園・公共下水道の整備、浸水対策など府民生活関連のきめ細かな事業です。「財政再建プログラム (案)」に続く「素案」は、こうしたソフトな事業の成果を消し去ろうとするものです。
市町村に自己責任・自己決定の原則を徹底し、「身近なサービスは、身近な行政で」と根こそぎ府補助金を削減・廃止することは、悪化した市町村財政に追い打ちをかけることになります。財源の削減と抱き合わせに自己責任を一方的に押しつけるのは、地方分権でも何でもありません。

●広域行政、市町村合併推進、「大阪都構想」の狙いは?

地域保健法制定による保健所の統廃合や社会福祉構造基礎改革、介護保険法制定等は、自治体リストラと同時に、自治体再編と深く絡み合っています。
2001年度に大阪府は市町村合併推進に国補助金の2000億円に同額の2000億円を加えて4000億円の「合併推進費」を計上しました。
市町村の「自主的・主体的な合併の推進」としながら、実質的に合併の「旗振り役」を果たそうとしています。
基礎的自治体である市町村と府県の役割とあり方については、今後府民、市町村労組等とともに深めなければならない重要な課題です。

●「NPOの協働」の名による行政の守備範囲の撤退

住民が求めるサービスが多様化し、行政や企業で担えない重要な役割を住民自らが起こすと言った市民活動としてのボランテイア活動が活発化してきています。
「骨子案」で、「民間で提供できるサービスは民間に委ね、民間との協働で行う方がより効果的なものは協働で実施し、民間では供給できないサービス、委ねることになじまないサービスは行政が行う」としていますが、NPO団体では、安上がりな行政の下請け機関として使われてはたまらないとの警戒感もあります。7月に開催された太田知事の府民との対話事業「大阪わいわいミーテイング」で、「NPOと行政とでは情報量も事業も人材も圧倒的な差がある。対等なパートナーになりうるのか」「協働というなら、施策の計画段階から参加したい」等の声が集中したのもうなずけます。
今回大阪府が行革志向でアウトソーシングしたり、補助金支出を適正化する手法の一つに「NPOとの協働・支援」を唱っていることは、大きな疑問です。
問題は、財政危機を理由に行政の直接サービスを減らそうとしていること、行政によるサービス供給からNPOや民間に振り替えようとしていることです。
本来行政は、NPOの自主的自発的活動を支援することであり、行政の直営で行うサービスを投げる受け皿ではないはずです。NPOとの協働・委託は、行政責任の撤退そのものです。

(4)「全国一スリムな組織づくり」の実態と問題点
●3000人 (一般行政部門) の削減は、府民サービスの低下と職員の労働強化をもたらす

「素案」は、「少数精鋭の 『シンクタンク組織』 実現に向けて、出先機関の再編・集中化、抜本的なアウトソーシング、事務事業の見直しなどにより、徹底的なスリム化をすすめるとし、すでに過去6年間で1400人の削減を行ってきましたが、今後10年間で3000人、全体で20%の削減とするとしています。3000人の内訳は、「事務事業の見直し・出先機関の再編等」で1200人、「アウトソーシング (業務の外部委託化)」で800人、「BPR (ビジネス・プロセス・リエンジニアリング=パソコン等を活用しながら業務の流れを大幅に改善・効率化すること)」で400人、「独立行政法人化」で600人としています。教職員は1400人削減としています。
今まで述べてきたように、府が直接担当していた業務を外部委託したり、事務所を統廃合し、府民から行政窓口を遠ざけたり、「BPR」で業務の効率化で大幅な人員削減は、府民サービスの低下をもたらし、働く職員には労働強化を強いることになります。

●研究所、大学、病院などの独立行政法人化は、なじまない

国における独立行政法人化は、国立大学や国立試験研究機関に対して、導入が図られていますが、法人である研究機関は、企業会計で運営されることとなり、各機関で所轄官庁が示す「中間目標」に沿った「中期計画」を作成し、認可されれば人件費を含めた運営費を国から借りて事業を行う。所轄官庁は「評価委員会」を設け、業務実績を評価することになります。
高度で専門的な教育・研究部門などは採算に合わない不採算分野だからこそ、行政が担っているのです。民間の経営ノウハウを取り入れるということは、儲けが見込まれる業務優先にならざるを得ず、民間企業と太刀打ちできません。府立の研究所、大学、病院が経営体としての採算性が最優先される独立行政法人化の対象にされることは、他方で府民の「安心」と「安全」を切り捨てることにつながります。

(注)独立行政法人
国の省庁再編を前提に国家行政のスリム化を図る目的で考えられたもの「独立行政法人通則法」(2001年1月6日施行) が裏付け法。対象組織を国家行政組織のくことを主眼としている。職員の身分は、引き続き公務員であるところが多いが、一部では非公務員型もある。現在は、国の組織が対象で、地方自治体対象の法は未整備である。

●出資法人の半減、補助金・委託料の1割削減

法人の自立的な経営改善を進め、経営の透明化を図るため法人の廃止・統合、民営化や「法人のあり方」を見直し、人員削減、補助金・委託料の削減等で組織のスリム化をめざすとしています。
すでに1999年度からその手法で見直しが進められてきましたが、さらなる「見直し」の具体的目標が提示されたことになります。
府の全ての職場に準じた「行革・リストラ」がかけられていますが、今までの成立経過とともに、法人の目的と府民ニーズに照らしての検討が必要です。
しかし、赤字法人、収支がマイナスであることを理由に、府民に自己負担増を招いたり、職員の雇用を脅かすことは許されません。