委託労働者に賃下げを強いるな 入札額の最低制限価格を設定し、適正な労務単価を保障せよ

この間、「府行財政計画案」の具体化・実施で、本来自治体で責任を持つべき業務が非常勤職員雇用、外部委託に変えられてきています。国や自治体が発注する公共・委託事業に従事する労働者に適正な労働コストが保障されず、低コストによる競争入札が広がり、法律違反の賃金がまかり通っています。先般府職労が実施したアンケートでも「入札ごとに給料が下がる」といった声が多数寄せられています。
大阪府は、各施設ごとに行われていた委託役務業務を、一定の統一基準を定め事務の簡素化、効率化を図り、入札と契約事務の集中化を視野に入れたシステムを構築するとし、50業種委託について請負契約業務の入札参加審査制度を設け、年明けの1月16日から入札が開始される予定です。
清掃等の委託労働者に賃下げを強いることなく、入札額の最低額を設定することを求め、府当局に申し入れを行いました。

2002年12月9日

大阪府知事 太田 房江 様

大阪府職員労働組合
執行委員長 金治貞男

公契約における公正な賃金確保等に関する要請

府職労は、全ての働く労働者の賃金底上げを重点にし、運動をすすめてきました。また、「公契約運動=公的労働における社会的水準の賃金確保」にも力点を置いた取り組みをすすめているところです。

国や自治体が発注する公共・委託事業に従事する労働者に適正な労働コストも保障されず、低コストによる競争入札が広がり、法律違反の賃金がまかり通っているのが現状です。大阪府の委託事業に雇用される労働者においても例外ではありません。このような実態を是正させ、賃金の最低規制ラインが保障されるよう、大阪府として責任を負うべきと考えます。

この間、大阪府は、府行財政計画案の具体化・実施で、本来自治体で責任を持つべき業務を正規職員を配置せず、非常勤職員雇用、外部委託化に置き換えてきています。その結果として公共サービス分野で賃金・労働条件の低下が広がり、大阪府域の低賃金労働者の拡大と労働条件の悪化、そして府民サービスの質の低下がもたらされてきています。

府職労が実施した「委託労働者のアンケート」では、「入札ごとに、給料がダウンする」「入札額の最低額を設定してほしい。労働者に賃下げが続くという負担を強いられる」などの声が寄せられています。

2002年3月25日付の「総務省自治行政局長通知:地方自治法施行令の一部を改正する政令の施行について」で、低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の対象となる契約の範囲を「工事又は製造その他」に拡大する旨の通知を行いました。

「公共工事設計労務単価(基準額)」は、農林水産省、国土交通省の「二省協定」にもとづき、毎年示されています。大阪府の発注8部局の入札においても、「二省協定」による労務単価が設定され入札が行われています。

大阪府は、このたび、請負契約業務の入札参加審査制度を設け、平成15・16年度の契約に向けて、来年1月16日から入札が開始されようとしています。

ついては、「委託業者雇用の労働者賃金が適切に行われるよう」、下記事項について要請します。

大阪府の委託役務契約にあたっては、最低制限価格を明記した入札内容とすること。
少なくとも、二省協定に準じる労務単価の設定を踏まえた最低制限価格とすること。

 

大阪府の委託契約と委託労働者の現状

1. 大阪府の委託労働者の現状

(1)委託業務の種類
・ 建物など各種施設管理、・機械設備点検・運転操作、運搬、医療(医事、機器保守)給食、検査、情報処理、図面製作、クリーニング、図書整理、速記など

(2)委託労働者数(大阪府の庁舎内で働く人数)
600人から700人(推定)

2.  大阪府の委託派遣労働者の実態

(1)委託業務に派遣されている労働者の実態
ア.入札によって業者は変わるが、そこに働く労働者は変わらず賃金・労働条件がダウンする実態が生まれています。
イ.託契約ではなく(仕事の指揮命令が府の職員から出される)、派遣労働的な業務実態での労働者も存在します。

(2)委託派遣労働者の賃金権利
・賃金 時間給平均 751円 大阪府の最低賃金(703円)以下の雇用が14人
・有給休暇 ある 80% ない 20%
・退職金 ある 27% ない 72%
・健康診断 ある 65% ない 34%

3. 委託派遣労働者の法的な検討

(1)大阪府の委託契約
ア.大阪府公報により委託にかかわる項目が公告がされている
「公告」は、「地方自治施行令(昭和22年政令第16号)第167条の6及び地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続きの特例を定める政令(平成7年政令代372号)第6条により公告する」となっている。

イ.「委託」の入札による落札者の決定について
・大阪府財務規則第57条の規定に基づいて定めた予定価格の範囲内で、最低価格をもって有効な入札を行ったものを落札者としている。
・この内容は、上限価格は設定されているが、最低制限価格が設定されていない入札告示となっており、極端な場合1円でも落札者となる決定方法である。

ウ.大阪府財務規則
第57条 契約担当者は、その一般競争入札に付する事項の予定価格を記載した書面を封書にし、改札の際これを改札場所に置かなければならない。
2 令百六十七条の十第二項の規定により最低制限価格を設けたときは、前項の書面に合わせてこれを記載しなければならない。

(2)地方自治法(契約の締結)
ア.契約の締結については、地方自治法第234条で定められており、具体的な内容は政令で定めるとしている。
1)第二百三十四条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
2)前項の指名競争入札、随意契約約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
3)普通地方公共団体は、一般競争入札又は指名競争入札(以下本条において「競争入札」という。) に付する場合においては政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとする。
ただし、普通地方公共団体の支出の原因となる契約につい.ては、政令の定めるところにより、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもつて申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができる。

イ.政令での契約関係は、地方自治施行令 第6節 第167条で示されている。

(3)大阪府の委託の背景
ア.2002年3月25日以前の政令第167条の10及び2項・     第百六十七条の十は、今年の3月25日以前は、「工事又は製造の請負の契約」と限定された内容となっていた。
イ.最低制限価格を入れた競争入札で、大阪府が大阪地裁、大阪高裁で敗訴
・大阪府成人病センターの業務委託契約にかかわる競争入札で、最低制限価格を設定し入札したことに対し住民訴訟(1997年)が行われた。訴訟内容は、最低制限価格の設定は違法であり、失格金額と最低制限価格の差額(損害額)を関係者が大阪府に支払えというもの。
・地裁、高裁判決<平成11年(行コ)第90号公金支出指し止め等請求事件、判決:平成12年4月27日>がおこなわれ、住民側が勝訴、2002年7月18日付け最高裁決定で、府側の控訴を「受理しない」と高裁判決が確定した。

(4)地方自治施行令第167条10、10の2項の改正
ア.地方自治法施行令の一部を改正する政令(平成14年政令第55号)が2002年3月25日付で「地方自治施行令第167条10、10の2項」の改正が各都道府県知事宛てに通知された。
イ.通知された「契約に関する事項」は次の内容となっている
低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の対象となる契約範囲を工事又は製造その他についての請負の契約とした(地方自治施行令第167条10及び第167条の10の2項関係)。

4. 「施行令」の改正を踏まえ賃金の抑制をさせない入札制度の確立を

(1)入札調査制度及び最低制限価格制度のその他について
ア.入札価格調査制度及び最低制限価格制度の対象範囲をこれまでの「工事又は製造」に「その他」を新たに追加した背景の上に要求を前進させることが必要
イ.    総務省 自治行政局 行政課(小岩氏)は、「その他」の範囲を「請負」(委託)に限定し、製品等の契約はその範囲にしていないとしており、運動の強化でその対象を広げる取り組みが必要である。

(2)大阪府の委託入札・契約の今後の方向について
ア.これまで各事業課(病院)単位で行われていた委託入札業務を最終的には集中化(用度課が対応)する方向で進められている。
イ.今年度、入札参加資格制度の導入を行い、2003.2004年度に大阪府と契約を行う、請負契約業務入札参加資格申請の受付(2002年7月29日時から2002年10月11日)を行っている。
ウ.大阪府が発注する請負業務50業種169業務を対象としている。
エ. 入札参加資格申請により資格を得た者の有効期間の開始が2003年1月16日からで、2003年度の契約にかかわる入札を実施するとしている。

(3) 大阪府に対する要求と交渉が求められている
ア. 現状であれば、大阪府の委託にかかわる入札は、従前からとられている「予定価格の範囲内で最低価格」での落札決定方式となる。
イ. この間の政令改正を生かすために早期に大阪府に対する要求と交渉が求められている。
ウ.建設労働者が中心となり運動をすすめる中で、建設省、運輸省、農林水産省の協定(3省協定)、による「公共工事設計労務単価(基準額)が毎年示され(現在は農林水産省・国土交通省の2省協定)、その労務単価による最低制限価格が設定されている。大阪府の委託契約においても、最低限、国に順ずる各業種の労務単価基準を設定し、最低制限価格を設定した入札を行うようを求めていくことが必要となっている。


低入札価格調査制度と最低制限価格制度について

1.低入札価格調査制度(地方自治施行令第167条の10第1項)

工事又は製造その他についての契約に限り、
ア.       不当な低入札をしたものがその申し込みをした価格では、契約の完全な履行をせず、そのために結果的に地方公共団体が損害をこうむるおそれがあると認められる場合、
イ.      社会通念上、正常な取引関係がゆがめられることとなるような入札をする場合に、次順位者を契約の相手方とすることができる制度。

地方自治施行令(昭和22年政令16号)(抄)

(一般競争入札制度において最低価格の入札者以外のものを落札者とすることができる場合)
第167条の10 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他の請負の契約を締結しょうとする場合において、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者の当該申込みに係る価格によってはその者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認めるとき、又はその者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認めるときは、その者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした他の者のうち、最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができる。
2 (略)

一般競争入札に限らず、指名競争入札でも適用可能(自治令第167条13)。

2.低制限価格制度(自治令第167条の10第2項)

工事又は製造その他についての請負契約に限り、
ア. 当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認める場合に、
イ.あらかじめ最低制限価格を設けて、
ウ. 予定価格の制限の範囲内の価格の最低制限価格以上の価格をもって申し込みをしたもののうち最低価格をもって申し込みをした者を落札者とすることができる制度。

 地方自治施行令(昭和22年政令第16号)

(一般競争入札制度において最低価格の入札者以外のものを落札者とすることができる場合)
第167条の10(略)
2 普通地方公共団体の長は「一般競争入札により工事又は製造その他の請負の契約を締結しょうとする場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けて、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができる。
※一般競争入札に限らず、指名競争入札でも適用可能(自治令第167条の13)。