職場から府政を考える(1)

大阪府立公衆衛生研究所
府民に対する公衆衛生サービスは府民の健康被害を未然に防ぐこと
日常の地道な努力が緊急の時に速やかに対応できる

ウイルス課研究員 森川佐知子

財政難のしわよせが影響

各課において様々な意見があり、必ずしも全体の意見を反映させている訳ではないが、大阪府立公衆衛生研究所の一研究員の立場からの実情を問題として提起させていただきたい。
ご存じのように、大阪府は長引く不況の中、未曾有の財政危機に直面しており、「府行財政計画案」に基づき各組織の再編、機能縮小、人員削減を行っている。公衆衛生研究所も例外ではなく、数年前からじわじわと、財政難の影響を受け各予算が削減されてきた。そして、平成15年度からは「効率的、効果的な研究所のあり方を検討する」という名目のもとで、4部8課への組織改革、2割の人員削減が実行に移される結果となり、それにより、各課とも人員削減に伴った業務内容の見直しを行わざるを得なくなった。

研究施設にはそぐわない施設や設備

また、建物自体についても、40年以上も前に建てられたものなので、現在の研究施設としてはそぐわないと思われるところがある。検査機器、保管のための冷凍庫、冷蔵庫などは年々増加してくるが、老朽化した建物には重量的にも電気消費量的にも負担となっている。
全所的に大がかりな工事をしても、いつまでもつのかという思いもある。部屋の面する方角、実験の内容等により、各室の室温はまちまちであるにもかかわらず、空調管理が一括集中して行われている点も、研究をするのに適した環境であるとはいえない。
GLP対応のため、要求として各室の温度管理も挙げているのだが、各室対応の空調設備の設置は建物全体におよぶ取り組みが必要なため改善される気配はない。
予算が有り余っている訳ではないし、どうやら当研究所の設備に関する予算配分の優先順位は低いようだ。「不便だけれども、緊急に対応すべき課題ではない。」という見解なのだろう。

公衆衛生検査所でなく公衆衛生研究所だ

そう考えてみると、府民に対する公衆衛生サービスは府民の健康被害を未然に防ぐことであるので、感染症の原因病原体の検査などは仕事として目に見えやすい。検査の結果は速やかに還元されねばならないから、「緊急性」は大である。しかし、研究は目に見える成果が出るまではどうしても時間が掛かるため「緊急性」とは結びつけにくい。そして、このように人員と予算が削減されてくることで、どうしても検査業務の占めるウエイトが大きくなり、研究に費やす時間や費用が削られてしまっているのが現状だ。しかし、何か忘れられている。ここは公衆衛生検査所ではなく、公衆衛生研究所なのだ。

いざ事件が起こったときのために

研究は毎回成果が得られるとは限らない。長い時間を費やしても、結果としてネガティブで終わることも多い。それは、外部から見れば、何もやっていないようにすら見られてしまうのであろう。でも、そうではない。私自身は注目されるような研究成果をあげるに至っていないが、40年以上の公衆衛生研究所の歴史の中には研究員の研究結果を受けて新たに改善された検査法や注目されるようになった重要な疾病などもある。職員は日頃の業務を通して、いざ事件が起こったときには速やかに対応できるよう、コツコツと努力を続けているのだ。普段から細胞を培養したこともなければ、「いざSARSの検査だ」となったときに急に分離用の細胞が扱えるわけがない。しかしながら、今の状況を見ていると「いざというときだけは必要な費用は出しますが、その他のお金は緊急を要しないので出せませんよ」と言われているように感じる。普段からの地道な努力こそが大事なのだが、その部分が目に見えないばかりに軽視されてはいないだろうか? 一見社会ニーズに合わないと見える研究でも、地道に続けているからこそ、いざというときそれを応用して対処することが出来るのだ。

府民の衛生環境を守るために

我々が日々技術の習得・開発、技術水準の向上に努め、また、時間や経費の削減にも努力しなければならないのは言うまでもないが、府民の衛生環境、健康をあずかる一機関としての機能を果たしていくためにもこれ以上の人員削減や施設環境の悪化は避けなければならない。