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安心できる障害児・者医療の実現を! 大阪府立身体障害者福祉センターのあり方を考える

府立身体障害者福祉センターの存続と発展をめざす会

「府立身体障害者福祉センターの存続と発展をめざす会」は、大阪府が行財政計画案の中で「府立身体障害者福祉センター附属病院の抜本的見直し、更生施設のあり方検討、授産施設の民間移行」を打ち出したことに対し、大阪府職員労働組合健康福祉支部と障害児・者を守る全大阪連絡協議会が呼びかけ人となって、身体障害者福祉センター附属病院の廃止・施設の民間委託に反対し、機能拡充を願い、そのためのとりくみを幅広い方々とともにすすめていくために、2001年8月31日に結成されました。そして、府議会に向けた請願署名にとりくみ、2万5244筆をこれまでに提出してきました。

「府立身体障害者福祉センターの存続と発展をめざす会」では、府立身体障害者福祉センターの附属病院と施設の発展を願い、障害者・家族の方との懇談会や障害者医療を考えるシンポジウムを開催してきました。その中で出された意見などをもとに、今回、「公的医療機関の充実で、安心できる障害者・児医療の実現を!=府立身体障害者福祉センターの存続と発展をめざして=」と題した、身障センターの今後の方向について、期待されていることをたたき台としてまとめました。
この(案)は、まだ充分に議論されたものではありませんので、議論のたたき台として、幅広いみなさん方にお読みいただき、ご意見を寄せていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

また、身障センターの存続と発展を求める署名にも、ぜひご協力をお願いします。

府立身体障害者福祉センターの今後の方向について(案)

2002年2月 府立身体障害者福祉センターの存続と発展をめざす会

 はじめに

大阪府は、2001年9月、8月に発表した大阪府行財政計画(素案)をパブリックコメントをふまえ(案)としてとりまとめましたが、そこでは福祉・医療分野が軒並み見直しの対象にあがっています。府立身体障害者福祉センターについても、附属病院については、当面着手するもの(平成14年度~16年度)として、「同院が、本来果たすべき障害者医療の広域的、専門的病院としての要請に十分答えた利用実態にないことから、府立の病院において今後、担うべき広域的・専門的な障害者医療やリハビリテーション医療機能をより効果的・効率的に提供する観点から、府衛生対策審議会における審議を踏まえて、そのあり方の抜本的な見直しをすすめる。」施設については、中長期的に実施するもの(平成17年度~23年度)として、「更生施設については、附属して必要となる医療機能と併せて、今後、施設のあり方を検討する。授産施設については、民間への移行をすすめる。」とされています。附属病院については、6月の新聞報道時点では「廃止を検討」とされていたもので、府民からの「廃止するな」の多くの声が届けられる中、「見直し」となったものです。

今回の、府の行財政計画(案)は、財政危機の最大の原因である関西空港二期事業をはじめとする大型開発については推進する立場を打ち出す一方、府民の暮らし福祉・医療・教育を切り捨てる、自治体としての役割を放棄するものです。財政難を理由に見直しの攻撃がかかっていること自体、許すことはできません。

府立身体障害者福祉センター附属病院は、堺の地において、障害者の方々が安心してかかれる病院としてその役割を果たしてきました。府民・障害者の立場に立つならば、老朽化した建物の建て替え・改修、医療内容・医療機器の充実こそ求められています。障害者・児は医療について切実な問題をさまざま抱えています。大阪府として、身体障害者福祉センター附属病院を障害者の願いに応える病院として、存続・発展・機能拡充させていくこと、施設とも連携した障害者センター的機能を充実させることが必要であると、今回私たちは、「府立身体障害者福祉センターの今後の方向について(案)」をたたき台としてとりまとめました。私たちは、この「今後の方向」について、府民の方々から意見をいただき補強していきつつ、大阪府にその実現を求める運動をすすめていくものです。

1.大阪府立身体障害者福祉センターは

大阪府立身体障害者福祉センターは、堺市にあり、施設(肢体不自由者更生施設・重度身体障害者更生援護施設・重度身体障害者授産施設)と附属病院(整形外科・リハビリテーション科・内科・眼科・歯科)、義肢や装具の製作施設からなっています。平成12年度より耳鼻科・小児科は必要性があるにもかかわらず廃止されました。

これまでの歴史を少し振り返ると、昭和25年、身体障害者福祉法に基づき、大阪府立傷痍軍人河内更生所を大阪府立身体障害者更生授産所と改称。翌26年に大阪府立身体障害者更生指導所が現在地に開設され、同年に診療所が6床で開設されました。この診療所が昭和29年には附属病院(23床)となりました。41年4月には更生授産所、更生指導所(附属病院を含む)、義肢製作所を大阪府立身体障害者福祉センターとして統合・発足しました。同年6月重度身体障害者授産施設(定員50名)を開設。昭和45年には附属病院が増改築されました。そして、47年に更生施設を建て替え100名定員、平成11年には授産施設を建て替え70名定員となり、附属病院は整形外科・内科・リハビリテーション科・歯科眼科など認可病床176床を有するものとなり、障害を持つ皆さんをはじめ地域住民の医療に大きな貢献をしてきています。

附属病院の整形外科は、人口股関節手術数1670症例に達し、近畿内で屈指の実績を誇っています。歯科においては、年間診療日数224日、延べ患者数4743人にのぼり、障害者歯科医療の3次医療の機能を果たしていますし、南大阪地域では、この機能を担える病院は他にありません。また、近年では、地域リハビリテーション支援センターに指定され、平成13年7月からは、「高次脳機能障害モデル事業」の指定を受けるなどさらに機能の拡充が期待されています。施設部門においては、開設以来千数百名が医学的・社会的リハビリテーションサービスを受け、多くの障害者が巣立ち、その中でも地域生活している障害者にとって附属病院はかけがえのない存在となっています。

2.身障センター附属病院の果たしてきた役割、身障センター附属病院・障害者医療に求められていること

組合では6月に職員アンケート、7月に患者・住民アンケートに取り組みました。職員アンケートは121枚回収され、87.5%(105名)が存続を願い、そのうち、約半数(47.6%)が拡充を求めていました。今後担っていく役割としては、地域リハビリテーションの拠点施設になる 60.3%(73名)、障害者の方専門の病院になる 46.3%(56名)が多くあげられています。これまで果たしてきた役割として「障害者医療の総合病院として整形外科を中心に、内科、眼科、歯科、耳鼻科、小児科と連携をとってチーム医療を行ってきた。営利を追及する民間病院では診察困難な患者さんを中心にケアしてきた」「歯科では重度心身障害児の治療、就学前心身障害児施設の検診指導に貢献」「人口股関節手術障害者医療の先駆的役割」「府下の身体障害者への医療・医学的リハの先駆的役割」「地域生活している障害者のよりどころ」等があげられています。

患者・地域住民アンケートは、301枚回収し(8/22時点)、内受診又は入院したことのある方が264人でした。91%(274名)の方が病院の存続を願い、「身障者のため、附属病院が近いため家も変わってきたのです。病院がなくなるようだと大変困ります。」「廃止しないでほしい。むしろ科を増やしてすべてこちらの病院で受診したい。もし廃止になれば不安で生きる意欲がなくなる」「入院・手術ができる体制で残してほしい。規模の縮小では意味がない。障害者向けを充実し専門性を高めてほしい」など切実な声が寄せられています。「どんな病院になってほしいと思いますか」という設問では、リハビリテーションの拠点施設になる48.5%(146名)、地域に根ざした病院になる45.8%(138名)、困っている患者さんを積極的に受け入れる45.1%(136名)となっています。病院や施設の独立行政法人化や民間委託については75.7%(228名)が「府の責任でやるべきことはやってほしい」と答え、「民間委託すべき」という人は、7.6%(23名)でした。

「めざす会」では11月に「障害者(児)医療を考える懇談会」を行いました。身障センター附属病院の果たしてきた役割としては、「歯科における障害者治療は、他に行けるところがない」「歯科でも眼科でも整形と連携しているからこそ装具の工夫ができる」「障害者が安心してかかれる」などがあげられました。今後の課題として「脳性麻痺障害者の二次障害に対するきめこまかな診断や専門的な対応。地域の医者への指導」「障害者が何かあった時すぐにかかれる病院に」「地域の病院ではなかなか診てもらえず、診てもらったとしても適切な対応ができにくい」「成人期の障害者が継続してかかれる病院に」「作業所での訓練や姿勢などの指導」「入院時の付き添い問題」「障害者の癌などの発見が遅い。検診の充実が必要」といったことがあげられました。

3.障害者医療の現状について

障害児・者医療の発展は、急速に進み、利用者や家族からの期待もそれに従って、大きく変化してきています。このニーズを整理すると以下のような内容となっています。

①医療ニーズの拡大

1,障害児療育、教育、福祉の機能の拡大と共に、ノーマライゼーション、リハビリテーション思想の定着で、これまでの、収容・入院型の障害者医療から居宅支援、デーサービス支援のの中での医療への期待が拡大しています。
2,さらに、医療が特別な環境での治療重視型から、居宅支援型医療、QOLを重視し生活の中で共存できる医療への期待が高まっている。(働き続けながら障害と共存することや、二次障害問題など)この点では、職場環境や生活環境の中での日常的な医療の新しい関わり方が求められています。
3,また、インフォームドコンセントに基づく医療や利用契約制度など自己選択の自   由、権利擁護が求められる時代の中で、情報の公開や治療の見通しを含めた納得いく医療への期待が高まり、特に意志表示能力の低い人たちへの権利擁護を前提とした医療や看護の構築が求められる時代となっています。
4,施設収容型福祉から「地域自立型」の福祉が重視される時代の流れの中で、医療拠点施設のあり方が、専門性と共に地域支援型へと期待が転換しきています。
5,同時に、市場経済原理の強調される社会の中で、改めて、医療・福祉の公的機能としての役割が問われる時代となっています。

 ②障害者医療の特殊性

では、なぜことさらに、今、こうしたニーズへの対応が必要となっているのでしょうか。
前述の医療懇談会などで、切実な要望が様々あげられていますが、ここで改めて、障害児・者に関わる医療の特殊性について整理してみます。
元来、「医療」は医学的観点から言えば、疾病等の治癒及び看護などの介護を基本として、病的状態からの改善を目的としています。一方「障害」という概念は、日本的に言えば(手帳制度等)「状態の固定化」を基本としています。
医学技術の発展は、こうした治癒概念に、その予後、あるいは予防という考え方を加え、とりわけ人間生活の価値観を重視する「医療におけるQOL」の重要性、さらに、患者の合意を基本とする、信頼関係に基づく医療行為の重要性として「インフォームドコンセント」などの考え方が主張され、人権を守る医療の重要性が主張されています。
こうした中、とりわけ「障害児・者」医療においては、
1,高次医療;障害原因となる疾病が高次能機能障害や染色体異常などの複雑な要因を持つ場合、あるいは、原因が特定できず、その研究的要素も含めた特定治療が必要であるなど、極めて高次であるため、医療費面でも多くの負担を必要とするものが多い。
2,継続医療;同時に、「障害の固定化」を持続的に管理していく必要性が高く、医療と生活の両面に渡る総合的な対応が不可欠となる。例えば、「てんかん」等の投薬は、長期あるいは、一生投薬の管理を必要とするものもある。また、脳性麻痺などによる「二次障害」の管理なども、継続的な検査データーの蓄積と日常管理によってのみ、適切な治療が可能となるケースが多い。
3,複合医療;さらに、こうした継続的管理は、とりわけ投薬等の管理の場合、副作用等に関する管理も必要であり、そのために、複合的な医療分野の管理が必要となる場合が多い。例えば、「てんかん」管理において、その副作用としての口腔管理、あるいは、「肝障害」等へのリスク管理など、科をまたいだ管理が必要となり、いくつもの科を掛け持ちで受診する場合も多く見られる。
4,福祉的支援を必要とする医療;また、治療の効果や人権的観点から、インフォームドコンセントが叫ばれているが、特に理解能力やコミュニケーション上の障害を持つ人たちについては、その医療行為自体が理解不能で、治療の拒否や適切な対応の困難な場合がある。例えば、聴覚障害者の手話の援助や知的障害者の場合など、歯科治療における開口保持、術後の管理上の困難などがある。こうした場合、他の看護やコミュニケーション支援などの人的介護の体制を必要とする。
等の特別な状況が生じてきます。
従って、こうした面では、医療費の負担補助等の経済的支援と共に、受け入れ施設の拡充が不可欠となっているのです。

③障害者医療への要望の背景

こうした、特殊性を持つ、障害児、者の医療は、極めて特別性の高い医療となります。
同時に、様々な「障害の状態」を理解して、コミュニケーションを含めて対応していくことや継続した予防、予後管理を行っていくためには、スタッフの継続的、総合的体制が必要となるばかりか、マニュアル化されない援助の工夫が必要となります。
従って、現在の診療報酬を基本とした、日本の医療制度の中では、医療経営的には採算が合わない、あるいは、治療リスクも高くなる(継続投薬管理とショック状況の判断等)等の事から、一般の病院では、受診そのものが忌諱されるケース多いのが現状です。
勿論、現実には、諸制度の原則がありますから、表向き拒否をされるというより、実態として受診が不可能となるということです。
例えば、一般歯科での知的障害者の治療は、開口不能という事になりますし、強度行動障害(著しい騒ぎ、自傷・他傷、強いこだわり行動等)の場合などは、術後、切開部をこじ開けてしまう、ギブスを無理に外す等の行動があり、治癒が困難な場合などがあり、基準看護の体制のある病院でも必ず、家族の付き添いが指示される等の実態が報告されています。
従って、身障センター附属病院等の様に、「障害の状態を理解したスタッフ」がいて、「様々な治療支援の工夫がされる」「特別な治療の実績がある」「障害があっても診療を拒否しない」「一つの病院で、様々な治療が受けれる」等の実績のある病院に、多くの期待が高まっているし、そこに通院や入院をしなければならない必然性が生じているのです。
一部民間の病院でも、専門的医療技術に加え、PT,OT等のコアメディカルスタッフを配置、生活支援のスタッフまで配置している病院には、他府県からの通院者も含め患者が集中する等の現象が起こるのも無理はありません。

(資料) 障害児の母の手記から私の娘は、現在36歳です。1歳2ヶ月の時、近所の開業医の誤診のため10ヶ月半の意識不明、昏睡状態で、大阪の総合病院に1年程入院していました。
機能回復的な治療を要するようになったので「ここは総合病院だから専門病院に行った方がいいよ」と言われ、硬直した身体はまるで洗濯板を抱いているような感じの我が子をおんぶして外泊をとっては、身障センター(当時は、木造のバラック)に行き始めたのがセンターとの出会いでした。
成長時期の病の後遺症はひどく、知能・肢体機能障害を合わせ持つ重度重複障害者です。
整形外科では、リハビリ治療は勿論縮んだアキレス腱を伸ばす手術や装具を付けての矯正治療等、機能回復に向けての治療が続けられました。現在は、整形外科には何かあると受診し、近況状態を報告し、アドバイスを受けています。
また、逆まつげがひどく、まつげが目にひっついて涙や目やにで目が開かないときが時々あり、近くの眼科の診察を受けましたが、「うちでは出来かねますね」と窓口で断られました。
その時、センター病院の眼科で受診、応急処置を素早くして下さり、「手術を受けようと決心した時はいつでもいらっしゃい」と言って下さり本当に救われました。
大切な乳幼児期の後遺症は歯をも襲ってきました。生えてきてもすぐ虫歯になりどうしようもありません。それでも何とかならないかと、乗り換え乗り換えで片道1時間30分程かかる桃谷の大阪府歯科医師会に通っていました。
昭和50年4月、身障センターに待望の歯科が開所された時、子どもは養護学校に通学しており、病院は目と鼻の先、通院が楽になると思ったのですが、歯の状態が状態なだけに、入れ歯には出来ないし、全部抜かれてしまうと言う不安もありました。でも先生が診療後第一声で「やる気がでてきた」と言って下さった言葉に涙を流したのを今でも覚えています。開口器や歯を削る器具音はものすごく嫌がり暴れて必死に抵抗しますので、高度な技術と根気を要するのでやはり専門病院でしか出来ない治療です。
そういった時間をかけての治療は営利目的ではとても取り組むことはできません。やはり公立の専門病院が重要な役割を果たすことになるのです。
テクニックの一つに娘の好きな童謡をテープで聴かせ安心度を高めての治療もありました。歯には治療の終わりはありません。でも、毎日のブラッシングをしても結局入れ歯になりました。この入れ歯も、本人にうまくあって、自分で勝手にはずすことも無くうまく活用できています。
そういった専門病院に恵まれ、最善の治療を受けることが出来たからこそ現在の娘があるのです。
患者の必要性に合う診療科を復活して病院本来の機能を備えた障害児者自身が心おきなく利用できる永遠の府立身障センターであって欲しいのです。
最後に、なぜ身障センターでなければならないかについて言いますと、障害児者であるが故に専門的医療や心のケアーが必要で、それに応えてくれる医療が受けれるのがこの病院だからです。

④切実な要望としての「公的医療」の充実

しかし、前述のような民間病院は、極めてまれであると言わざるを得ないのが実態です。
従って、こうした特殊性を持つ医療は、結局、公的医療機関に依存せざるを得ないのが、実態です。元来、地方自治体は、第一条の二で「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」と規定しています。
こうした面から言えば、現行の医療制度が患者負担を増大させるなどの状況の中で、安心してかかれる医療機関として「公的病院」が障害児・者医療に対して担うべき役割は極めて大きいものと言えます。
実際、同じ様な財政危機を抱えると言われている東京都でも「都民により判りやすいものにするために、都立病院が担うべき医療分野を「行政的医療」と位置づけ」「患者ニーズ、都民ニーズに比較して民間一般医療機関のサービス提供が質的、量的に不足している医療分野を担う」「多様なマンパワーの確保や特別な対応が必要なことから、採算確保が難しく、民間の取り組みが困難な医療分野を担う」として、都立病院等、公的医療機関の必要性を明確にしています。
実態に即した、府立病院のあり方こそ、問われる所です。
しかし、大阪府の場合、衛生対策審議会審議そのものが、こうした利用者の実態を十分把握することなく、「採算主義」で議論が進められる事には、大きな疑問があると言わざるを得ません。
ここで、改めて、利用者の立場から今、障害児・者医療への期待を整理しておきます。
①療育相談事業(療育、医療、教育の体系的援助、母子通園含む)
②訪問療育機能
③脳性麻痺障害者の健康管理事業(二次障害への検診指導)
④訪問リハビリ機能(在宅障害者へのリハビリ支援)訪問看護機能(在宅障害者への訪問看護及び家庭介護指導)
⑤入院障害者への介護機能
⑥障害者の検診機能(意志表示の困難な障害者の健康管理)
⑦障害者医療(歯科、耳鼻科、眼科)
⑧関連施設への医療的フォロー(学校・施設への医療的ケアーの指導及び支援)
⑨民間医療機関への障害者医療の啓蒙(発)
⑩医療・福祉の連携機能の見直し

(資料)2001年度 障害者関係団体要求実行委員会からの大阪府への医療関係要望(重度障害者児医療費助成制度)
☆重度障害者医療費助成制度を拡充してください。
①補助率の削減は市町村との完全な合意を前提とし、市町村が事業を縮小しないよう、必要な財政措置を講じてください。
②重度障害者医療費助成制度の実施を国に働きかけてください。
③制度の対象となる障害者の枠を拡大してください。
(入院時の付き添い)
☆重度の障害児者が入院した際、家族や施設職員が付き添わなくてもいいように、看護体制を整備してください。
(二次障害への対応)
☆「二次障害」についての実態調査を大阪府の責任で実施してください。
(肢体障害者に対応できる医療機関)
☆肢体障害者が訓練のできる医療機関を増やしてください。
(府立各病院の整備)
☆府立の各病院を、障害者とその家族が安心して入院や治療ができる指定病院にし、設備や条件をととのえてください。
①視力障害者、知的障害者などに配慮した案内表示を整えてください。
②案内人・介助者、専任の手話通訳者を配置してください。
(更生医療)
☆更生医療は、入院後でも手続きができるようにしてください。

4.身体障害者福祉センターにおける今後あるべき施設機能とは

現在の障害者施設とそのあり方を考える場合、その問題点をあきらかにすることが必要です。障害者・家族・地域・施設スタッフの立場から、以下のような事が指摘されます。
1,大阪府下の障害者施設の絶対的な不足と地域偏在。依然として出される「学校卒業後の行き場のない不安」「病院退院後の行き場のない不安」など。
2,我が国における障害者施設種別は縦割りの法制度に基づき40種類にも及ぶ複雑すぎる施設体系。
3,施設不足や複雑すぎる施設体系と関連して、施設機能・役割の混乱。
4,比較的障害の軽い人々を対象として整備されてきた歴史があり、重度・重複・重症な障害者への対応がきわめて不充分ということ。
5,我が国において現実的には量的にも地域への広がりにおいても、最大の社会資源となっている無認可作業所・小規模作業所への施策を公的な国の制度として確立し、その抜本的な支援の強化を図ること。
6,障害者施設運営の公開と民主化。権利擁護を確立するシステム、形骸化している施設最低基準、職員の配置基準の見直しと個室化など生活空間の見直し。

現在の府立身体障害者福祉センターの施設部門については、以下の視点で見直しが必要と考えられます。
①障害者の権利を保障しうる生活を実現する。
②ノーマラーイゼーションの理念を貫き、人間らしい生活を実現する。
基本は、職住分離を原則として、訓練期間であっても、個人のプライバシーが保障され、地域生活への円滑な移行を可能とする条件を整備する。
③地域における福祉エリアを生活実感のあるものとし、ネツトワークを構築する。
④豊かな人生を築くための、生涯教育、文化、スポーツ、趣味の活動を保障する社会教育と文化の施設を地域に構築する。
⑤重度・重複障害者の地域生活を支援するための医療・福祉の連携した地域支援システムを構築する。この点では、特に昨今のノーマライゼション思想の発展の中で、旧来は要治療、看護の対象であった、重症心身障害の人たちも、より積極的に、人生のQOLを求めて、地域生活に挑戦している実態を踏まえ、その支援の仕組みづくりが急がれている。
などです。
こうした、基本的視点から、府立身体障害者福祉センターは、一定期間の自立訓練のための専門施設としての位置づけと共に、より積極的な、医療と福祉の両面の機能を生かし、地域での生活支援システム、ネットワークの拠点施設として発展させる必要があります。
そのためには、①更生施設としての機能の見直し②作業施設としての機能の見直し③地域利用施設として再整備とともに、総合リハビリテーションセンター(①      評価・判定機能及びそれを反映させるネットワークづくり②専門サービスの提供と確保③専門従事者の養成訓練④リハビリテーションに関する調査・研究と情報の収集・提供⑤地域リハビリテーション活動の育成と援助を行うとともにその拠点としての機能。この点では、障害者団体を含む民間諸活動への援助と育成に積極的役割を果たす)としての位置づけを明確にする必要性があるのではないでしょうか。
上記の視点を加味して、今後、身体障害者福祉センターの施設部門の再編にあたっては、障害児・者の現状と地域状況に合わせて、以下のような改善が早期に図られることが急務となっています。
1,更生施設においては、現在の生活空間は、昭和47年建築という老朽化しているものであり、早急に建て替えが必要。その際、居住空間の個室化をはしめ抜本的な改善が不可欠である。同時に、単に訓練施設としての機能と共に、地域自立への円滑な移行のための通所施設との連携、グループホームなどを活用した地域日常生活訓練など総合的なプログラムが展開できる条件の整備が必要。また、関係諸機関(身体障害者更生相談所、福祉事務所、障害者職業センター、保健所、地域ボランティアセンター)との一層の連携の強化を図ること。
2,授産施設においては、作業活動の場としてその内容を充実させること。基本は、職住分離が可能となるよう、身障福祉ホーム等の介護型小規模施設としての住宅提供と日中活動の保障と職業自立を図ることが必要である。そのため、授産施設は現在の入所型にとらわれず、通所を基本とするよう地域生活が可能となるような支援を進めていくこと。また、附属病院と一層の連携を強化して必要な医療、機能訓練の場を保障すること。地域住民やボランテイアとの日常的な交流の場の保障をすること。
3,さらに、日常生活に医療を必要とする人たちのために、医療と福祉の連携が出来る、療護施設(この施設には、重心ショートステイ、通所療護施設の機能を付加することが不可欠である。)や医療付加型地域生活支援センターや訪問看護ステーション等の地域支援センター機能を付加すること。
4,現在の補装具製作施設をさらに充実強化しリハ工学をふまえた福祉機器用具センターとして、再編強化すること。
等が上げられますが、基本は、なかなか民間で担えない機能をどう充足していくかが改善の大きな視点となります。従って、これまでの経過と機能を拡充する立場から、公的施設としての役割を見直し、とりわけ、医療と福祉の連携を重点とし、利用者要求に応えうるセンターのあり方こそが求められていると確信しています。

5.府立身体障害者福祉センターの今後の方向について

基本的考え方~身体障害者福祉センターを、身体障害者福祉センターの名にふさわしいものとして整備する。病院部門については、すべての障害者に門戸を開いた医療センターとして、来所した障害者に対し、基本的に必要な医療の提供や各種の情報提供ができるような機能を持つ。

(1) 医療部門

①診療科(入院含む)
整形外科・内科・リハビリテーション科・歯科・眼科 (現在あるもの)に加え、耳鼻科・小児科を復活し、精神科・泌尿器科・神経科など、障害者の願いに応えられるよう拡充する
※「障害者医療相談」という窓口をつくり、複数の科にまたがることでも相談できるようにする(プライマリ・ケア)
②障害者の健康管理
ⅰ障害者対象の健康診断・健康相談を定期的に実施する。(各地域で行うことも)
ⅱ脳性麻痺障害者の二次障害への対応
③障害者医療に関する啓蒙・指導、他の医療機関との連携強化
ⅰ 障害者医療専門医の育成
ⅱ 養護学校への障害児専門医の派遣
ⅲ 地域の障害者作業所、施設などへの援助~作業所や施設・学校などの職員・利用者に対する医療的ケア・健康管理に関する教育など
ⅳ 在宅の重度障害者への対策として、他の機関や障害者団体と連携し、実態調査を実施し、必要な対策を行う。またその結果が府下の障害者に対する地域医療に役立つよう相談・指導を行う。
ⅴ 他の医療機関との連携~センターでの医療サービスが十分できないと判断される場合は、他の適切な医療機関などを紹介し、その後のフォローも行う。地域で診療が受けることが望ましい場合、地域の病院へつなぎ適切な医療が受けられるよう、フォローを行う。
④訪問看護・訪問リハビリテーション

(2) 研究・研修・企画調整部門

①     府下各病院で行われている障害者医療に関する情報を集め、研究・研修を行う。
②     新しい日常生活用具・補装具の研究開発など、リハビリテーションに関する研究
③     障害児療育、発達に関する研究
④     高次脳機能障害モデル事
⑤     地域リハビリテーション推進事業
⑥ 医療機関や相談機関、保健所、労働機関などとの連絡調整

(3)   ショートステイ

①     重症心身障害者・児を含むショートステイ(レスパイトケア、訓練目的)~施設、病院
②     親の入院の際、同室に入院できる施設

(4)リハビリテーション

乳幼児期から高齢期まで各年齢層を包括するライフステージを見通したリハビリテーション
※成人期においては、地域生活への移行に向けたとりくみ、移行後のアフターケア
※乳幼児期・学齢期においては、通園施設や学校などへのPT・OTの派遣
※訪問リハビリテーション

(5)施設部門

①更生施設~自立生活に向けての訓練(入所・通所)
②地域日常生活訓練~グループホームなどの活用
③作業施設(入所・通所)
④就労・生活支援センター
⑤療護施設(入所・通所) ~どんな障害の重い人(重症心身障害者)も受け入れる重介護型施設~病院との連携あるいは病院内に併設

(6)相談部門

①地域や各市町村からの相談に応じる。
②病院や施設、各部門にかかわる障害者(児)に対する相談に応じ、その豊かな自立を援助する。また、研究部門と連携して、研究を深める。

(7)福祉機器用具センター

補装具・福祉機器・福祉用具の製作・開発  病院、施設との連携のもと、一人一人にあった、生活環境に即した補装具・福祉用具の製作

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