大阪府財政構造改革プラン及び2010年大阪府人事委員会勧告についての要求書

大阪府人事委員会委員長
帯野 久美子 様

大阪府関連労働組合連合会
執行委員長 辻 保夫

大阪府財政構造改革プラン及び2010年大阪府人事委員会勧告についての要求書

人事院は去る8月10日、国家公務員の給与に関する勧告等を行いました。
給与等に係る勧告は、①官民較差がマイナス0.19%となったとして56歳以上(行政職俸給表1表6級以上)の俸給及び特別調整額を1.50%引き下げる②40歳台以上の俸給表を平均0.1%引下げ、4月1日に遡って適用する③一時金を0.2月削減する④定年延長の検討の中で50歳台の給与のあり方について必要な見直しを検討する。高齢期雇用問題として65歳定年制の実現に向けて本年度を目途に立法措置のための意見の申出を行うというものです。これは、平均年間給与9.4万円引き下げとなり公務労働者の生活悪化をもたらすとともに、民間労働者への影響とあわせ内需拡大に逆行し、地域経済をいっそう冷え込ませるものです。


加えて、大阪府は現在、府職員・教職員の強い反対にもかかわらず、給与や一時金などの大幅なカットを続けるとともに、今年度で終了する「財政再建プログラム案」での人件費削減をさらにすすめるため、財政構造改革プランを策定し、「公務員制度改革」として、独自給料表の導入とそれによる職務職階給の強化、現給保障の廃止・解消、現業職員の給料表改悪などの給与制度の改悪を行うと同時に、人件費の大幅カットを行おうとしています。
大幅な賃金カットは、地方公務員の給与決定にかかる「均衡の原則」「情勢適応の原則」に基づく大阪府人事委員会の調査やその結果に基づく勧告を無視する行為であり、人勧制度の根幹を破壊するにとどまらず、人事委員会の存在そのものも否定するものです。
また、貴委員会は、本年3月30日に出した「給与に関する調査・研究報告」では、「平成23年度当初を目途に独自給料表の導入を図る必要がある」として、①主査級の5級格付けの見直しなどの職務・職責に即した職務の級の統合、②一定の役職者での昇給を前提としない単一の号給にするなど号給数の簡素化、③昇給カーブのフラット化など、「新たな不利益が生じることも想定」と改悪の意図を露骨に示し、橋下知事が進める給与制度の改悪と共同歩調をとるものとなっており、中立的機関としての本来の役割から考えても容認できるものではありません。
府労組連は、貴委員会がすべての府職員・教職員の生活改善と府民本位の職務に意欲を持って取り組める賃金・労働条件の確保にむけて、下記要求にもとづき財政構造改革プランによる給与制度改悪や賃金カットに反対するとともに、積極的な勧告を行われるよう強く要求します。

1.財政構造改革プラン「素案」が示す公務員制度改革は、給与制度の改悪、知事との価値観の共有を求める人事・任用制度、大幅な人員削減をすすめるものであり、職員・教職員の賃金水準の引下げ、より一層の長時間過密労働につながることから、大阪府に対し次のことを意見表明すること。

(1)「1つの役職で1つの級」「昇給カーブのフラット化」を進める独自給料表(行政職給料表)は、限られた役職の範囲、広範な職種の存在、職種により最終到達する役職段階の違いなど大阪府職員の職務実態から見て職種間・職員間に不平等をもたらすものであり、その導入は行わず、だれでもが現行行政職6級の水準に到達できるよう改善すること。「主査級の5級適用廃止」「従前の主任主事(技師)の4級格付け廃止」は行わないこと。国を上回る給料表の最高号給の引下げは行わず改善すること。また、教育職給料表の同趣旨での検討・見直しは行わず、特2級の廃止など改善すること。
(2)制度改正に伴う「現給保障」は、給与制度の改悪に伴う給与の減額による生活への影響を緩和するための経過措置として行われるものであり、民間における実態や過去の判例等から考えても正当なものであり、その廃止・解消は行わないこと。
(3)現業職員の(仮称)技能労務職給料表(国公行政職2表相当)の適用検討は、大阪府における現業職場の業務内容や役割を無視し、非正規・低賃金労働が強いられている民間類似職場との賃金比較をもとに大幅な給与削減を行うものであり、その適用検討は行わず、副主査への任用問題など現行の制度改善を行うこと。
(4)給与減額等の人件費削減は、勧告制度の根幹を破壊し人事委員会の存在を否定するものであり、直ちに中止するとともに、「プラン」による新たなカットは行わないようよう大阪府当局に要請するなど毅然とした対応を行うこと。「財政再建プログラム案」により改悪された、住居手当や旅費等について元に戻すよう勧告すること。
(5)知事と価値観を共有し、同じ考え方を持つ本庁部局長や本庁課長の任用をおこなうことは、憲法15条の「全体の奉仕者」としての役割に反するとともに、行政の政治的中立性や安定性をゆがめ、政策の継続性を損なう危険性があることから、そのような制度改悪は行わないこと。
(6)「人事評価制度の見直し」については、府当局が行った「アンケート」結果においても管理職を含む多くの職員から現行の評価制度が「勤務意欲の向上」や「資質・能力の向上」につながっておらず、賃金反映も頑張りの促進等につながっていないとの回答が示されており、新人事評価制度の抜本的見直しと評価結果の賃金リンクの撤回をおこなうこと。

2.人事院が発表した「地域別の民間給与との較差」では、近畿地域は民間給与が公務員給与に比べ5,031円(1.30%)高くなっており、大阪府での公民格差がプラスになることが予想されることからも、給与に係る人事院のマイナス勧告や50歳代後半の給与抑制などに追随することなく、すべての府職員・教職員の生活改善に結びつき、民間労働者の賃金引き上げや地域経済の活性化につながる積極的な勧告を行うこと。

3.公民格差については、減額された賃金実態と比較すること。また、官民比較対象企業規模を100人以上に戻した公民較差の勧告と全職員の賃金改善を行うこと。民間実態調査のあり方については、府職員・教職員の待遇改善につながる方向での検討を行うとともに府労組連と十分協議すること。

4.高齢期雇用については、「雇用と年金の接続」を大原則にすること。また、60歳の定年年齢を65歳まで延長する制度見直しにあたっては、本人選択に配慮するとともに、早期退職による不利益をもたらさず、60歳前後の賃金水準を低下させないこと。また、定年まで働き続けられる職場環境をつくるため定数増などの措置をはかること。

5.初任給(中途採用者の前歴調整を含む)の改善をはじめ、青年層の賃金を大幅に引き上げること。

6.非常勤職員の賃金引上げや休暇等の労働条件改善、正規職員との均等待遇などを実現すること。

7.公務員労働者の労働基本権回復にむけた勧告を行うこと。

8.地域手当は、全国的に引き上げられている状況を勘案し、府下一律支給を堅持し、水準を引き上げること。

9.教育職給料表について、次の点を踏まえた勧告とすること。
①「首席・指導教諭」制度を廃止し、「特2級」適用をやめること。
②1級賃金水準を抜本的に改善すること。
③義務教育等教員特別手当、教職調整額の改悪は行わないこと。

10.「副主査」「総括実習助手」「総括寄宿舎指導員」の任用制度について選別的任用を止めるなど抜本的に改善すること。また、「主査選考制度」及び講師経験者の「特別選考制度」を抜本的に改善するとともに、合格者枠を大幅に拡大すること。

11.男女共同参画社会の実現、仕事と家庭生活が両立できる環境整備の立場から、改悪された特別休暇の回復と拡充を行うとともに、育児休業・介護休暇等について、有給保障や対象範囲の拡大、期間の延長、代替要員の確保など、抜本的に改善すること。また、廃止された保育休暇の15分問題を解決するため、育児のための部分休業の取得時間を15分から認めるなどの改正を行うこと。

12.女性の採用・登用の拡大や昇任・昇格の改善を図るとともに、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなどの防止対策など、働きやすい職場環境と労働条件の改善を図ること。

13.一日の勤務時間を拘束8時間(実働7時間、週35時間)とすること。時間外勤務・恒常的残業をなくすため、抜本的対策を講じること。時間外勤務は原則として1日2時間、1週5時間、年間120時間とする上限規制や深夜・休日勤務の規制を行うとともに、この間に出されている厚生労働省通達を尊重し、「不払い残業」を一掃すること。また「裁量労働制」の導入や勤務時間の弾力化は行わないこと。

14.教職員の長時間過密労働を解消するため、市町村を含むすべての学校で使用者責任による「勤務時間把握」が適正に行われるよう徹底すること。また、違法な状態にある教職員の深刻な超過勤務を是正するため、教職員定数増など抜本的な対策を講じること。学校五日制が完全実施されているにもかかわらず、教職員の勤務が実態として週休二日制になっていない事態をただちに解消するよう条件整備を行うこと。

15. 学校現場では育休・病休等の代替教員が見つからず、「授業に穴があく」という実態をなくすため、地公法22条2項の脱法行為にも等しい定数内講師等の大量採用をあらため、法の趣旨にそったものとなるよう抜本的に改善すること。

16.職員・教職員の健康管理体制の強化や労働安全衛生対策、IT化に伴う職場環境の整備と安全衛生対策、メンタルヘルス対策等を強化すること。

以上

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