誰もが安心して受けられる医療を

マンパワー不足、綱渡り状態
「医療崩壊」を実感

コロナ感染拡大によって、大阪では入院先や療養先が見つからず、「自宅療養」を余儀なくされる人が1万数千人に及ぶ事態となっています。

病床や看護師をはじめとする医療従事者の不足も深刻な事態となり、コロナ患者を受け入れる府立病院各センターもその対応に追われています。

府職労副委員長ではびきの医療センター看護師の山本桃代さんと国際がんセンター看護師の池田史織さんにオンラインでインタビューしました。

◆山本 桃代さん〈左上〉

(府職労副委員長・はびきの医療センター看護師)

◆池田 史織さん〈右下〉

(国際がんセンター看護師)

インタビュアー

◆小松 康則府職労委員長〈右上〉

◆越智 太一府職労青年部書記長〈左下〉

―コロナ患者の受け入れで職場はどうなっていますか。

山本 もともと人が少なく、独立行政法人化になって以降は「もうけのため」の仕事が増え、患者ケアの時間が削られ、パソコンに向かう時間が長くなったような印象があります。そんな中でのコロナ患者の受け入れで、さらに人が足りないと実感しています。コロナ患者の看護は通常の倍ぐらいの労力や時間を要します。コロナ患者受入れ病棟の看護師だけでは対応できないので、他病棟からも応援を出して、その日その日「綱渡り状態」で対応しているという感じです。

池田 がんセンターは、がん患者のための病院なので、コロナ患者は受け入れてませんでした。ただ、他の病院がコロナ患者を受け入れることによって、そこで手術等ができなくなったがん患者さんが紹介で来られたりしていたので、患者数は増えていました。
 しかし、大阪府の強い要請もあって、コロナ重症患者4床を受け入れることになり、ICU(集中治療室)で対応しています。そのため、がん患者の手術を制限しなければならない状態になっています。

―国際がんセンターでコロナ患者を受け入れると発表されたときは、府職労にもたくさんのがん患者さんやご家族から声が寄せられました(別掲で紹介)。その状況も含めてですが、いま「大阪は医療崩壊している」と言われていますが、医療の現場でそれを実感することはありますか。

山本 もともとは、コロナ中等症患者のみを受け入れていましたが、重症化しても転院先がない患者さんもおられます。現在は大阪府からの強い要請もあって、重症者の受け入れもしています。毎日カンファレンスで1人1人の患者さんの状態と今後の方針を共有するのですが、厳しい状況への対応が続き、精神的な負担も大きくなっています。

池田 重症患者4人しかいませんが、がんセンターでは、人工呼吸器を使用して症状が改善しない場合であっても、ECMO(人工心肺装置)の装着ができないという前提での受け入れになっています。そのことは保健所等から事前に説明はしていただいているのですが、実際にそういう場面になると、ご家族から「ECMOをつけてほしい」という思いを聞く場面もありました。
 また、がん患者の手術は「待ったなし」なんです。手術すれば完治が見込める場合でも、それが1ヶ月遅れることによって腫瘍が大きくなり、完治できなくなることもあります。コロナ患者を受け入れるときも「手術は止めるべきでない」という声が大きかったと感じています。また、化学療法で通院されている方も多くいます。化学療法されている方は免疫も低下し、重症化リスクも大きいので不安の声も出されていました。

山本 それと、コロナ対応業務に追われ、やりたい看護ができないくやしさを感じることも多々あります。状況がひっ迫しているので、患者にどう向き合うかという看護の基本が置き去りにされ、とにかく人を配置すればいいという状況になっています。はびきの医療センターでは、コロナ病棟勤務のスタッフを確保するために、産婦人科の助産師までコロナ病棟に異動させている状態も起きています。

池田 現状は何とかなっていますが、もちろん看護師の中には、妊娠していたり、子育てしているスタッフも多数いますし、これまでも頻繁に欠員が生じている状態でした。それに加えて、大阪コロナ重症センターにICU等の経験豊富な看護師を派遣しなければなりませんし、がんセンター内のコロナ重症患者の対応も必要になり、とにかく人が足りないので、そこを埋め合わせるのに必死で、まさに綱渡り状態でやり繰りしている状況です。

「自己責任」の押しつけではなく
必要な医療が受けられる社会に

―お二人のお話を伺っていると、必要な医療が提供できないという意味では「医療崩壊」という状況になっていることがよくわかりました。一方でオリンピックに看護師500人を派遣するというニュースなどもありましたが、現場のみなさんはどう受け止めていますか。

池田 そもそもオリンピックなんてできるんですかね。現実問題として、コロナ病床を看る看護師もいない、ワクチン接種の人も足りない、療養ホテルの看護師も足りないなどと言ってる状況なのに。今しなければならないことをやってほしいと思います。

山本 現場がどうなっているかしっかり見てほしい。菅首相が「潜在看護師がいる」と発言していましたが、どんな事情や思いで辞めざるをえなかったのかも理解してほしい。

―大阪の病床不足が深刻と言われていますが、なぜそのような状況になったと思いますか。

池田 これまで大阪府や大阪市が病院を統廃合したり、採算の取れない病院をつぶしてきたことが大きいと思います。府立5センターでも経営重視、採算重視で民営化に向けた流れを強めていると感じます。

山本 もうからない病院はいらないという方針が今日の事態を招いてますよね。いま国でもさらなる病床削減が進められていることも大きな問題だと思います。コロナで生活に困窮し、病院にかかれない人が増えてくるのではないかと心配しています。必要な医療が受けられない社会、何でも自己責任で済ませる社会にはしたくないです。

―ありがとうございました。最後に、国や大阪府、病院機構に言いたいことはありますか。

山本 何よりも働き続けられる労働環境を求めたいです。私たちが適切に医療や看護を提供するという業務に見合った人員と各センターにしっかり予算をつけてほしいです。

池田 コロナの前から毎年「人を増やしてほしい」とずっと言い続けていますが、毎年「病院機構が…」という返答の繰り返しなので、やっぱり人を増やしてほしいというのが一番です。

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