いのち守る33キャンペーン ついに本格始動!

異常な時間外勤務をなくそう
職員が笑顔で働き、住民も笑顔になる自治体をつくりたい

5月15日(日)10時30分よりオンラインで「いのち守る33キャンペーン 署名スタート集会」が開催されました。全国の自治体で働く仲間や市民のみなさん97人が参加しました。

集会のオープニングでは、主催者を代表して永戸有子さん(京都市職労)がオープニングトークを行いました。永戸さんは現場の保健師の悲痛な声を紹介し、キャンペーンに込めた熱い思いを語りました。

永戸さんのオープニングトーク

現場からの報告として、保健師や児童相談所のケースワーカー、本庁でコロナ対応業務をしている青年、福祉関係部署の職員など5人がリアルな実態を語りました(現場からの報告の概要はこちらに掲載)。涙しながら報告に聞き入っていた参加者もいて、共感が広がり、みんなの気持ちが一つになりました。

そのあと、高橋さん(京都府職労連) がキャンペーンの概要を説明し、

高橋さんのキャンペーンの概要説明

国公労連(日本国家公務員労働組合連合会)の大門晋平さんと労災被災者家族の会の中嶌清美さんがキャンペーンへの応援スピーチをしました。

大門さんのゲストスピーチ

集会の最後には、キャンペーンチームを代表して越智太一さん (大阪府職労)がキャンペーンへの協力を呼びかけるスピーチをしました。

越智さんのキャンペーン協力よびかけ

11時30分からの第2部では、自治体労働者が3~4人の小グループにわかれて、第1部の感想やキャンペーンへの思い、職場の状況などを交流しました。 参加者からは「どの訴えも胸に迫るものでした」「視野の広さを感じ、参加する前より希望を抱きました」「同じ思いを持っている人と出会えてよかった」など、たくさんの感想が寄せられました。

まだまだ話し足りないうちに終わりましたが、この新たにできたつながりを今後も継続させ、キャンペーンの成功をめざします。

いのち守る33キャンペーンって?

保健所をはじめ自治体で働く職員は、労働基準法で時間外勤務の上限が規制されているものの、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」や「公務のために臨時の必要がある場合」には、上限なく働かなければならないとされています(労働基準法第33条)。

「コロナだから」「公務の必要性がある」という理由で際限なく働かなければならない実態となっています。

そこで、京都府、京都市、大阪府で働く仲間と労働組合が力を合わせ、こうした状況を少しでも改善するために始めたのが「いのち守る33キャンペーン」です。

厚生労働省に労働基準法第33条にもとづく時間外勤務に上限規制を設定させることや総務省に自治体職員増員のための財政措置をさせることをゴールにしているキャンペーンです。

現場からの報告(ダイジェスト版)

「何もないのに涙が出てくる」
「昼食を食べるとはいてしまう」

京都市職労 井上さん(保健師)

保健所に応援に行っているときに、疲弊している保健師の様子を見聞きしたり、過労死の不安の相談を受けてきました。 ある保健師は、あまりの激務に「仕事中何もないのに涙が出てくる」と言いました。昨年度の新採保健師は、夏の第5波の時に、自宅に帰り、倒れて目が覚めたら玄関で数時間眠ってしまっていたと言いました。新採の中には、数か月で退職に追い込まれた保健師もいました。ある職員は「昼食を食べるとはいてしまう」といい、昼食抜きで仕事をしていました。そこまでして働くのは、市民の健康を守りたいという保健師としての使命感だけです。

今は、事務職の応援に加え、業務を委託し、保健師の業務負担を軽減したと言われています。しかし、それは市民の健康を守ることにはつながりません。

防護服は本当に暑く 使命感だけで毎日を乗り切る

京都府職労連 Rさん(行政職)

昨年、宿泊療養施設に関わる専属のチームに配属されました。毎日、フル防護服を着て、ホテル内の感染エリアで作業をするというものでした。

第5波では真夏の防護服作業に加え、下半期のホテルの契約更新事務が重なり、精神的、肉体的な疲労がピークを迎えました。本庁で17時まで仕事し、そこからホテルに出張して防護服で感染エリアに入り、業務終了が夜中1時を超えたこともありました。

防護服は本当に暑いので、何リットルもの汗をかきます。防護服を脱いだ後にそのまま汗だくで倒れ込み、本当に死ぬのではないかと思いましたが、使命感だけで毎日を乗り切っていました。

その後も第6波の対応など何とか乗り切り、この5月に異動しましたが、引き続き同じ部内の部署であるため、引き続き忙しい日々を過ごしています。昨年1年間で200回以上、防護服を着ましたが、蓄積された疲労が原因なのか、今でも身体の調子が悪く、「コロナ」と聞くと胸がざわざわします。

やりがいあるが
じっくり考え寄り添う時間ない

大阪府職労 前田さん(ケースワーカー)

大阪府の子ども家庭センターで、非行相談の担当をしています。犯罪行為など法律に触れた子どもや家出など犯罪につながるおそれのある子どもの対応をします。最近ではSNSで知り合った人と会うために家出をしたり、性被害に巻き込まれる子どもが増え、警察が保護し、通告を受け、そのまま一時保護となるケースも増えています。

一時保護中に、子どもや保護者と面接し、反省と再発防止に向けた援助や家庭内のルール調整や学校との調整だけでなく、時には、警察の事情聴取への協力や、性被害を受けた子どもの婦人科受診、家庭裁判所や保護観察所などの司法機関との対応なども行います。

ある一日を振り返ると、朝8時に家を出て、そのまま一時保護施設へ行って、子どもと面接し、次は学校を訪問して、また別の子どもと面接し、その後、職場に出勤し、1時間半の面接を3件行い、間に電話連絡や面接の打ち合わせが入ります。このときすでに午後10時です。出張や夜間の面接などは、恒常的にあり、時間外勤務も平均すると毎月70時間を超えています。

仕事にやりがいはありますが、じっくり考える時間や相手に寄り添う時間なども十分に作れません。やりがいを持って、人間らしく働き、生活できるような環境が必要だと思います。

夫と平日に晩御飯を食べたのは3年で2~3回

京都市職労 西山さん(同僚の訴えを代読)

私は9か月の子どもを育てながら勤務しています。今の部署に配属され4年目となりますが、産休に入るまでは年850時間ほど残業していました。繁忙期の年度末~年度初めにかけては毎月130時間の時間外勤務をしていましたが、それでも仕事は終わらず、どんどん新しい仕事がやってきます。いったい何人分だろうという業務を毎日隠れて泣きながらこなしました。

夫と過ごす時間も、結婚式の準備をする時間もありませんでした。夫と平日に晩御飯を食べたのは3年間で2~3回です。当時、顔を合わせるのは朝の10分程度でした。ゴールデンウイークや休みの日も出勤して仕事をしていました。好きな仕事ができているという思いだけで通勤し続けました。そんな中、夏に妊娠が判明しましたが、結果的には流産となりました。時間外勤務ばかりしてまともな食事をとってなかった自分を恨みました。それでも時間外勤務を続けました。

時間外勤務は人の心をむしばみます。よく「お母さんが笑顔だったら、子どもも笑顔だよ」と言われますが、公務員という仕事もそうだと思います。異常な時間外勤務からいい制度、いい施策が生まれるはずがありません。

長時間罵倒され続けることも
それでも住民の命を守るために

大阪府職労 西田さん(保健師)

保健所はこの2年間、コロナ第1波から6波まで、公衆衛生の最前線で奮闘してきました。

特に昨年春の第4波では高齢者の間で瞬く間にコロナが蔓延し、多くの犠牲者を出しました。まだ初期治療も未確立で、酸素飽和度が90を切らないと入院できない、救急車の中で何時間も待機、やっとの思いで入院できたが数日後に亡くなってしまうという悪夢のような日々が1か月以上続きました。

ご家族からは早く入院させてほしいという悲鳴に近い訴えを聞き、入院フォローアップセンターに何回も掛け合っても入院が決まらず、毎日朝から不安な気持ちを抑えて出勤し、健康観察の電話をかけました。中には、夜中や早朝に急変し、救急車で運ばれるケースも珍しくありませんでした。健康観察や入院調整に明け暮れ、精神的に一番辛く苦しいときでした。

住民からの暴言を受けることも度々ありました。療養ホテルや配食サービスのトラブル、証明書発行、検査や医療体制への苦情など、私たちの力ではどうにもできないことを長時間罵倒され続けることもありました。

それでも住民の命を守るため、応援してくださる方や一緒に頑張る仲間がいたから投げ出さず何とか乗り切ってこられたと思います。しかし、精神的疲れもピークで、また次がくるの?と思うともう限界という気持ちや、障がいのある方や難病の患者さんたちへの支援は後回しで、このままではいけないというもどかしさと毎日闘っています。

参加者の感想

私ができることを考えるきっかけに

香月亜美奈(泉佐野保健所)

どこの職場でも業務が違うにも関わらず、長時間の働き方で心身共に疲弊しているということは共通であるので、長時間労働の問題というのは明らかであると感じました。それが労働基準法33条によって、際限なくなっていることが恐ろしく思いました。

私が特に印象に残ったのは国公労連の方のお話です。新規採用で当初は明るくて熱意に溢れていたなかじまさんが夜中まで働く日々で数年後には見た目が変わり果て、退職したというエピソードはショックを受けると同時に憤りも覚えました。

どうして熱意に溢れる人が辞めなければならないのか。熱意ある人がいなくなる職場、辛い思いをしなければならない職場から、どうやっても良い施策やサービスが生み出されるとは私には思えませんでした。

33キャンペーンに参加したことで、現状を改めて知ることができ、私が今できることは何かを考えるきっかけになりました。まず私にできることとして署名し、広げることから始めたいと思いました。

住民のためのいい仕事をするために

塚元寛貴(消防学校)

初めて新型コロナウイルス感染症が確認されてから2年以上が経過し、私たちの働き方がどう変わったのでしょうか。労働基準法第33条に定める「臨時の必要性」を根拠として、保健所をはじめとする職場では、終わりの見えない超過勤務を強いられている人がいます。こうした現場の実態について5人から語られ、キャンペーンの目的が参加者の共通認識として広がっていくのを感じました。公務の果たすべき役割を深く理解し、やりがいや責任感に満ち溢れた若い職員が、数年足らずで辞めてしまう。辞めなければ、自分を守ることができない、まさに「辞める」か「死ぬか」という選択を迫られているのだと思いました。

私が特に印象に残っているのは、「異常な時間外勤務からいい制度、いい施策が生まれるはずがない。市民のための自治体であるなら、まず職員がいきいきと働ける職場づくりが大切」との言葉です。

私たちの公務という仕事は、服務の宣誓をし、全体の奉仕者として全力を挙げなければなりません。一方で、そこで働く私たちもまた人間なのです。このキャンペーンは、労基法33条の「臨時の必要性」について明確にさせるという点で、とても意義があるものだと確信しています。住民のためのいい仕事ができるように、私もこのキャンペーン成功に向けて地道に広げていきたいと思います。

みんなで変えていくための第一歩に

至田智行(藤井寺保健所)

今回スタート集会に参加して「最近やっと落ち着いてきたな」と思っていましたが全くそんなことはなく、いま変えていかないといけないと強く思いました。

「コロナだから」「緊急だから」と長時間労働が2年以上も続き非日常から日常になってしまっています。こんな状況が続いているのに、労働時間の上限規制が明確に定められていないことにあらためて危機感を覚えました。

僕自身もコロナ関係部署にいたとき、長時間労働が続くと感覚は麻痺して身体はだんだん慣れていきました。周りも同じ環境なので、みんなで頑張っている印象が強くなり、それが当たり前になっていました。その分、自分がコロナ関係部署から離れるときは罪悪感を感じながら職場を出ました。現場の方からの訴えでもありましたが「やっと解放される」という言葉に心苦しく思いました。

これまでずっと変えられなかったことを変えることは難しいことだと思いますが、現場で起きていることを声に出し自分たちで署名を呼びかけるという行動には意味があり、所属する自治体を超えてつながりみんなで変えていくための第一歩となる場に参加できたことで自分も行動してみようと思うことができました。

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